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交際相手不要…なぜ?「若者の恋愛離れ」

2016年1月20日 23:09
交際相手不要…なぜ?「若者の恋愛離れ」

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。20日は「若者の恋愛離れ」をテーマに日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。


■「交際相手が欲しい」新成人が減少
 結婚情報サービス会社「楽天オーネット」が今年の新成人を対象に行った調査で、若者の恋愛離れを示すデータが発表されている。

 過去と比べたときに最も変化が大きかった質問の一つが「交際相手が欲しい」。「交際相手が欲しい」と答えた新成人は、2000年には男性91.6%、女性88.5%だった。ところが今年は男性が63.8%、女性が64.2%と、全体の3分の2を割り込んでいる。

 実際に交際相手がいる人は1996年には男女ともに50.0%だったが、今年は26.2%と半分にまで落ち込んでいる。

 さらに、去年内閣府が発表した2014年度の調査で、20~30代で未婚・恋人のいない人に「恋人が欲しくない理由」を聞いたところ、多かったのは
1.恋愛が面倒…46.2%
2.自分の趣味に力を入れたい…45.1%
3.仕事や勉強に力を入れたい…32.9%


■「バーチャル化」で成熟に遅れ?
 多くの人がこう考えるようになった背景には様々な理由が考えられる。教育評論家の尾木直樹さんによると、「LINEなどSNS(=ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及で全てがバーチャルになってしまい、若者の精神的な成熟だけでなく、身体的、性的な成熟も遅れている」という。

 情報セキュリティー会社「デジタルアーツ」が去年実施した調査では、女子高校生の一日あたりの携帯電話やスマホの使用時間は平均5.5時間。そのうち6.8%は1日15時間以上スマホなどを使用しているという。起きている時間のほとんどを使っているということになる。

 尾木さんによれば、SNSで常につながっていることで行動が丸見えになってしまい、お互いの行動をしばるなど友達が信頼できなくなってしまうそうだ。そんな中、最後に信頼できるのは自分の親ということで、親との距離が縮まり、若者の自立が遅れているという。


■「親ラブ族」が増加
 こうした現象を「親ラブ族」と名付けているのは、「恋愛しない若者たち」の著者でマーケティングライターの牛窪恵さん。牛窪さんによると、「昔は親が干渉しすぎることで、子どもが反発して自立したが、今はむしろ親子の距離が近づいて休日に一緒に出かけたり、過ごしたりする仲良し親子が増えている」という。


■恋愛に受け身の男性増加の原因は…
 こうした精神的な原因だけでなく、社会環境も影響しているという。今の若者たちは不況の中で育ってきたため、望むと望まざるとにかかわらず、非正規雇用で働く人が増えている。牛窪さんによれば、「非正規雇用や年収が低い男性は『どうせ自分なんか』と自己肯定感が低く、自分から女性に声をかけようとしない」という。調べでは、非正規雇用の約85%の男性が「女の子から告白してくれれば」と言っているそうだ。

 実際にデータ(2011年内閣府)を見てみると、20代で非正規雇用の男性は、正社員の男性に比べて結婚している人や恋人がいる人が圧倒的に少ないのが現状だ。

20代男性
<既婚>
正社員…25.5%
非正規雇用…4.1%

<恋人あり>
正社員…33.5%
非正規雇用…16.4%

<恋人なし>
正社員…27.4%
非正規雇用…38.5%

<交際経験なし>
正社員…13.6%
非正規雇用…41.0%

 また、男性は年収が少ないほど、結婚している人の割合が少なくなり、逆に交際経験のない人の割合が増えている。


■女性側のハードルを下げるには
 こうした現状について、少子化ジャーナリストの白河桃子さんは「女性は出産を考えると、ある程度収入のある人と結婚したいと考え、相手に完璧さを求めるため、恋愛や結婚に慎重になる。こうしたハードルを下げるためには、出産後もワークライフバランスが確保され、男女ともに働きながら子育てができる社会になること、また、仮に結婚や出産後に相手と別れても、やり直しがきく社会になるべき」と話している。


■「恋愛できる環境づくり」を
 きょうのポイントは「恋愛できる環境づくり」。恋人が欲しくないという若者が多い一方で、実は、「結婚したい」と答えている人は20代、30代で77.7%もいる。結婚願望自体は決して低くないのだから、安心して仕事や子育てができる環境があれば、「何があっても大丈夫」と思えて、恋愛に積極的になれるのではないだろうか。