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“透析患者の最期に緩和ケアを”終末医療のあり方について初会合

2025年2月18日 0:21

■“透析患者には緩和ケアがない”

『透析を止めた日』

あるノンフィクション作品が話題を呼んでいる。著者は堀川惠子さん。夫が「多発性嚢胞(のうほう)腎」と呼ばれる腎臓の機能が低下していく指定難病を患い、その日々を記した作品だ。

10年以上、血液透析の治療を続けた夫は最期、「自分の命のことは自分で決めたい」と透析をやめる決断をし、亡くなったという。60歳だった。

最愛の夫の最期にずっと隣で寄り添った堀川さんは、その日々を振り返り、終末期の透析患者に「緩和ケアがない」との問題点を指摘する。

一般に、透析患者が治療を断念して、亡くなるまでに経験する痛みは凄絶(せいぜつ)だ。しかし、日本の医療体制では現状、透析患者の「緩和ケア」における十分なガイドラインが存在せず、患者への対応は医療機関ごとに大きく、ばらつきがあるという。

実際、堀川さんの夫も、ときに全身のけいれんを伴いながら痛みに耐えていたというが、がん患者などには提供される「緩和ケア病棟」には、最後まで入れなかった。さらには、亡くなる前日まで妻の堀川さんが自らの手で夫に鎮痛剤を注入していたという。

堀川さんは「緩和ケアがないことは、患者とその家族から選択肢と尊厳を奪う」と訴える。

■透析患者の最期のあり方 初会合

堀川さんの声はいま、政治を動かし始めている。17日、衆議院第二議員会館では上川陽子元外務大臣らが呼びかけ人となり、「腎疾患を軸に医療の未来を拓く会」の第1回会合が開かれた。

会合では堀川さんが自身の経験を語ったほか、議員らにより、透析患者の終末期における最期の意思決定のあり方や、治療を中止した後の痛みのケアのあり方などについて、意見交換が初めて行われた。

堀川さんは最後、「一日も早く、終末期の透析患者が安心して命を閉じられるように、お力添えいただきたい」と声を震わせ、思いを伝えた。

上川元大臣は「緩和ケアを受けられないのかという問題提起に、政治の側も早急に向き合う必要がある」と述べた。会合は、政策提言も視野に入れ、5月頃をめどに、とりまとめを予定している。

最終更新日:2025年2月18日 0:35