家の隣に“騒音ヤード” 掃除機レベルの音が毎日… 業者や自治体の対応は 【#みんなのギモン】
22日のギモンは「家の隣で年中騒音 どうすれば?」です。
茨城・古河市には、住宅のすぐ近くで金属を解体している場所があります。高い塀がありますが、中からは解体作業の音が響いてきます。「ヤード」と呼ばれる施設で、金属やプラスチックなどをリサイクルのため保管して解体もする場所です。リサイクルの「ヤード」は全国に約800件確認されています。
こうした施設について、日本テレビの情報提供サイトに投稿が寄せられました。「尋常じゃない騒音・振動・臭いに悩まされています」「施設がいつの間にかできてしまって…」という悩みでした。家のすぐそばに騒音を出す施設ができてしまってどうしたらいいかわからない、という切実な問題です。
そこで、22日のポイントがこちらです。
◇“騒音ヤード” なぜ住宅街に
◇悩んだら…対応は?
■わずか1.5メートルの距離にヤード “掃除機相当の騒音”が毎日
実際にどのぐらいうるさいのか調査報道班が取材しました。
向かったのは福井・鯖江市、メガネの生産で知られる街です。住宅街に入っていくと、鉄の塀が目の前に現れました。高さは5メートルほどで、威圧感すらあります。塀の中には重機が置かれていて、周りに鉄くずなどが積まれています。
すぐ隣に家族4人で暮らしているのが、情報提供をくださった1人、田中さん(仮名)です。田中さんは「静かな環境で子育てをしたい」と郊外の一軒家を新築しました。ところが3年ほど前、突然、隣の空き地にヤードができたといいます。
自宅にお邪魔したのは平日の朝8時。リビングで話をしていると、ヤードの扉を開く音が聞こえてきました。作業が始まる合図です。
自宅の隣に「ヤード」ができた田中さん(仮名)
「憂うつ以外の何ものでもない」
自宅の隣に「ヤード」ができた田中さん(仮名)の夫
「また始まったかと」
自宅の隣に「ヤード」ができた田中さん(仮名)
「もう本当にこういう(両耳をふさぐ)感じです」
すると、金属音が聞こえ始めました。騒音計の数値は最大で「70デシベル」を記録しました。これは掃除機や目覚まし時計の音に相当します。
2階に上がり、子ども部屋から外を見てみると、すぐそばに巨大な重機が見えました。大学生の長女は「騒音で勉強ができない」といいます。
自宅とヤードの距離はわずか1.5メートル。庭にはヤードから落ちてきたとみられる電子部品やプラスチックの破片がありました。油のような臭いもして、洗濯物を外で干すこともできません。
自宅の隣に「ヤード」ができた田中さん(仮名)の夫
「この辺で子ども用のプールを出したり、BBQをしたり、夏休みやゴールデンウイークにはやっていましたけど、もう全然なくなりましたね、ヤードがきてからは。当然くるってわかっていたらここで住宅を建てることもなかった」
住民が苦情を訴えても業者側とは口論になるばかりで、状況はまったく改善されないといいます。
■苦情が来るとわかっているのになぜ住宅街に? 専門家が指摘した2つのポイント
業者側も取材しました。こちらのヤードは中国人が代表をつとめていました。
――どうしてこの場所でヤードをやっている?
ヤード業者
「ここは以前、田んぼだったので安かったんです。場所を移すことも考えていろんな場所をずっと探しましたが、見つかりませんでした。1億円あればいいですが…」
自治体はどう考えているのか、鯖江市に聞くと「業者に対して騒音などに配慮するよう注意はしているが、法的な強制力はなくお願いベースになっている」と話していました。
ただ、周りの住民から苦情が来るのをわかっていながら、業者側はなぜわざわざ住宅街にこうした施設を造るのか。廃棄物やヤードの問題に詳しい猿倉健司弁護士に聞きました。
理由の一つ目は「交通の便が良い」ことだといいます。住宅街は国道などの幹線道路に近いことが多いです。そうすると資材を運ぶトラックが幹線道路に入りやすく、行き来しやすいといいます。
もう一つの理由は「売り地が増えている」ことです。祖父母や親の代からの広い土地を手放して、そこが空き地になってしまうケースが増えているそうです。そこにやってくるといいます。
カギとなるのがやはり自治体です。千葉市では2021年からヤードを規制する独自の条例で、一定規模のものを造る場合には、住宅から100メートル以上離れた場所とすることを定めました。また、茨城県や千葉県なども条例を作る準備をしています。また猿倉弁護士によると「住民らによる監視も大事だ」といいます。「騒音規制法や振動規制法もあります。現実にはこれらの法律に反しているのを個人で証明するのは難しいが、客観的な映像などの記録が役にたつ可能性もある」ということです。
今回、取材していたら、住民らが業者側に働きかけ、業者側が少しずつ改善を図っているところもありました。
茨城・古河市にある、できて20年ほどがたつ、金属などを扱うヤードです。時折、体に響いてくるほどの音がします。敷地の面積は広く、騒音に抗議する住民がいる一方で、こう話す住民もいました。
近隣住民
「最初のうちはうるさかったよ」
――音のたて方で気を使っているんだろうなってことは?
近隣住民
「塀を高くしてくれた」
近隣住民
「向こう(業者)からも要望を聞きにきた」
近隣住民
「『(塀を)どれくらいの高さで造ったらいいかな』と。そういう点は気を使ってくれるにはくれる」
業者に話を聞きました。
大城産業 大城勝会長
「近隣住民の“納得”にできる限り近づけていくのが、私たちがここで商売をやっていく一番の気を使うところ。まだまだ改善の余地はある。できる限りはやらせていただきます」
業者側がなんとか話し合いに応じようとか対話しようというところはまだいいですが、多くの場所では対話すらできないということで困っています。
住環境に配慮するような規制や条例はまだ少なく、廃棄物をどう処理するか、業者がそれをどのように扱うかという法律や条例は整備されてきていますが、リサイクルとなると廃棄物とは扱いが違い、規制がなかったり、条例や法律が整備されていなかったりするのが現状です。
リサイクルは社会で必要なことです。一方で自分が住む環境が一変してしまう問題でもあります。見過ごしてはいけない問題です。
(2023年9月22日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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