女性の社会進出…女性活躍推進法で変わるか
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。13日のテーマは「女性の社会進出…どうなる?」。今月から、全面的に施行された「女性活躍推進法」とは、どのような法律なのだろうか。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
■“女性の活躍”をデータで閲覧
今月から施行された「女性活躍推進法」。これは、従業員301人以上の企業は、管理職に占める女性の割合や従業員の残業時間を把握・分析した上で、女性の管理職の人数など数値目標を盛り込んだ「行動計画」を作り、公表する事を義務づけたものだ。
厚生労働省は、今回の法律施行に合わせて企業ごとに女性の活躍の状況を数値化したデータベースをサイトで公開した。これは企業名で検索すると、男女の勤続年数や、男女の育児休業取得率、管理職に占める女性の割合など企業が公表したデータを見る事ができる。これは、業種ごとで検索することもでき、同じ業種の企業で女性がどれだけ活躍しやすいか、比較する事もできる。
■企業にとってのメリットも
ここには多くの会社が登録を希望していて現在約3600社のデータが登録されているが、さらに1000以上の企業が登録を待っている状態だという。それには理由がある。このサイトに登録し法律で定める一定の基準を満たせば、レストランの格付けのように、どれだけ女性が活躍している会社か、レディーのエルに星の数で示される「えるぼし」という厚労省の認定マークを取得できる。企業はこれで女性の活躍の度合いを商品や広告でアピールできるというわけだ。
こうしたランク付けなどで比較できれば、学生が就職活動をする際も目安になるかもしれない。関西学院大学の大内章子准教授は「女性の管理職割合など数字を公表することは、社内の取り組みの結果を示す事。今後は女性の登用に熱心な企業とそうでない企業の二極化が進み、熱心な企業に優秀な女性が集まる時代になると思う」と話す。
■30年で女性の仕事はどう変わったか
実は、今月は、雇用における男女の差別をなくすことを目的とした男女雇用機会均等法が施行されてちょうど30年の節目でもある。この30年で時代はどう変わっていったのだろうか。それまでは女性は「お茶くみ」や「コピーとり」の仕事が中心で、結婚退職が当たり前だったが、その後、共働き世帯が急増していった。均等法施行前後に入社した女性社員がその後どうなったか、大内准教授は継続調査をしてきた。総合職の女性社員約60人が、入社から約15~20年たった2000年代前半には半数以上が既に退職していて、部長や課長など管理職になったのは12人だったという。
こうした高いポストをつかんだ女性の多くは出産という道を選ばず、仕事最優先で働いてきたような人が目立っていたということだ。また、女性は一般的にキャリアを積むのに大切な仕事経験や配置転換などが男性に比べて少なく、男性よりも昇進が遅いケースも多く見られたという。
■企業の取り組み
こうした中、企業も動き始めている。キリングループはおととしから女性社員に対し“前倒しキャリア”という取り組みを始めていて、説明会を行っている。この取り組みは27~28歳の女性社員に前倒しで大きな仕事を任せ、成功体験や得意分野を作ることで、結婚・出産でキャリアがストップすることのないようにしようというもの。また、NTTドコモは、去年からスライドワークという制度を始め、主な勤務時間は午前9時半から午後6時のところを、男女問わず午前7時から午後7時の間で、それぞれが勤務時間を前倒ししたり後ろにずらすなど、スライドさせて働けるようにしている。既に200人ほどが育児や介護のためこの制度を利用しているという。
■道をひらく役目
今回のポイントは「道をひらく」。小栗解説委員は自身の体験をこう語る。
「私は均等法の施行3年目に会社に入ったのですが、先ほどの“お茶くみ”ひとつとっても、女性がする時代から男女問わず、後輩がする時代になり、今や自動お茶くみ機で好きな人が好きなときに飲むように変わってきました。印象的なのは私たちのひとつ前の世代の女性たちが、常に、後に続く女性のためにと考えて行動している姿でした。その意味ではいろんな人生の選択がありますが、10年後20年後の全ての女性が、自分らしくいられるように、今の私たちも道をひらく存在でありたいものです」