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どんな法律?「障害者差別解消法」を考える

2016年4月5日 20:11
どんな法律?「障害者差別解消法」を考える

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。5日のテーマは“社会の壁をなくす”。「障害者差別解消法」では、役所や企業、店に対して、障害を理由とした不当な差別をすることを禁止している。さらに、障害のある人からの求めに応じて“合理的な配慮”をするよう定めている。どのような背景や課題があるのだろうか。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。

■41.5%が「外出時に困ることがある」

 「差別をしない」「配慮をする」ことは当たり前のように思えるが、厚生労働省が行った調査によれば、「外出にあたって困る事がありますか」という質問に、障害のある人の41.5%が「ある」と答えている現実がある。そのような背景もあり、個人の判断に委ねるのではなく、このような法律で明確に規定されることになった。

■“合理的な配慮”とは―

 個別の状況に応じて、必要とされる配慮というのは様々なので、「負担が重すぎない範囲でできるだけの配慮をする」ということで、法律では“合理的な配慮”としている。内閣府は具体的に下記のような配慮の例をあげている。

・飲食店で目の不自由な人に対して、メニューを読み上げる
・銀行で字を書くのが難しい人に対して代筆で対応する

 ただし、あくまでも企業や飲食店などに課せられるのは努力義務で、こうした対応をしなかった企業や店が罰せられるわけではない。また、役所や国公立の学校といった行政機関は、率先して配慮を行うべきとして法的義務が課されるが、いずれも罰則はない。

■難病の生徒のために20個のマウスを―

 香川県にある善通寺養護学校ではこうした配慮を今回の法律施行に先駆けて行っている。車いすで学校に向かうのは、高校2年生の宇田汰市さん。生後まもなく筋肉が萎縮する難病「脊髄性筋萎縮症」を発症。普段、隣の病院から学校に通っているが、週に数回、担任の先生たちが病室まで出向いてくれる。

 宇田さんがベッドの上で使うのは、マウスとタブレット端末。指先しか動かせない宇田さんでも操作できるものを先生たちが用意した。その端末で取り組むのは、ITサービス会社から課された職業体験の課題。先生たちが宇田さんの能力を活かして“キャリア”に繋げようと、病室でも職業体験をさせてくれる企業を探したのだ。

 宇田さん「実習ができる環境を整えてくれたり、活動する場を広げてくれた」

 近藤創先生「その子の困っているところに適切な機器やチャンスを与えてあげる。そういった指導をたくさんの先生がしていくと過ごしやすい子どもが増えるのでは」

 この学校では、宇田さんの障害にあわせるだけでなく、可能性を広げる教育をしている。宇田さんが指先でうまく動かせるマウスを探すのに、先生らはマウスを20個も買って試したという。子どもそれぞれの障害に対応するということは、お金も人も道具なども必要になるので、どの学校でも簡単にできるわけではない。

■子どもの成長にとってもプラス

 国立特別支援教育総合研究所の原田公人さんは「お金や人といったハード面がなくても障害に応じた配慮をしよう、という気持ちを持つことはできる」「今回の義務づけが、障害のない子どもたちが、障害のある子をどう気遣ったらいいかと考えるきっかけになってほしい。それは、いじめなど社会問題がある中で、子どもたちの成長にとっても良いことだ」と話す。

■相手の立場に立ってみる

 今回、新たな法律が施行されたが、できればこうしたことは法律や罰則で決められなくてもできる社会でありたい。ちょっと想像力を働かせて相手の立場に立ってみる、そうすればきっとお互いに何を必要としているかが、見えてくるのではないだろうか。