災害とネット 必要な情報、どう集める?
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。2日のテーマは「災害とインターネット」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
熊本地震では、今まで以上にインターネットが活用されている。例えば…
「のみ水ください」
先月16日、熊本市の江南中学校の校庭に書かれたこのメッセージはツイッターなどのSNSを通じて拡散された。
その後、メッセージを見た全国の人から水が届き、子どもたちの手によって今度は「のみ水ありがとう がんばるけん」と、校庭に感謝のメッセージが書かれた。インターネットの情報が拡散し、災害などの有事に生かされた好例となった。
■必要な情報をまとめる
一方で、インターネット上には情報がありすぎて必要な情報を見つけ出すのが難しいことがある。そこで、情報をまとめていこうという動きがある。
政府は各省庁などが個別に発信している情報を、被災者支援のために1つにまとめて発信するツイッターアカウントを今回、初めて開設した。
中には、熊本県警による、熊本地震に便乗した詐欺行為への注意の呼びかけや、厚生労働省が発表したエコノミークラス症候群の予防法などが並んでいる。
必要な情報が1か所に集まっていれば情報を探す手間が省けるので、被災者にとってはありがたい。
■グーグルマップに「まとめる」
こうしたニーズに、若者たちも立ち上がった。グーグルマップ上に給水所や避難所の場所、スーパーの営業情報、炊き出しや支援物資の場所など10以上の項目についてそれぞれまとめた地図を公開した。地図は広く利用され、地震から10日間で約150万回のアクセスがあった。
この地図の作製を呼びかけたのは大学生の塚田耀太さん(22)とその友人たち。塚田さんは東日本大震災の時は神奈川県にいて、「もっと早く行動すれば良かった」と後悔したという。
そこで、今回の地震直後にフェイスブックで「Youth Action for Kumamoto」という公開グループを立ち上げた。このグループには現在、約3000人が参加。その中の有志が行政のホームページや報道などから情報を集めて作った。
塚田さんは「色々な情報が流れていて、どれを見ればいいかわからない。情報を整理することが熊本に対して自分たちができることだった」と話す。
行政などが手の及ばない所を、インターネットに親しんでいる若い人たちの力が補った形で、これもまた「災害とインターネット」の有効な活用法となった。
熊本の現場でインターネットの状況などの調査を行った静岡県立大学の湯瀬裕昭教授は「今回の地震では、熊本市内では直後もインターネットが使えており、ネットでの情報収集に有効だった」と話している。
■デマに惑わされない
一方で、「インターネットの情報量は膨大で、デマなどの正しくない情報もあった」と話している。実際、写真まで載せて、「ライオンが逃げ出した」というデマが流された。また、熊本県警も、「デマ情報に惑わされないで」と注意を呼びかけている。
湯瀬教授はデマと正しい情報を見分ける方法として、「発信元が信頼できるか確認する」「情報をうのみにせずに自分でも調べてみる」を挙げている。私たちも、いざという時のために情報を見る目を養う必要がある。
■情報を行動につなげる
インターネットの情報収集力はだいぶ身近なものになってきた。でも、その情報を生かすも殺すも私たち次第。情報を得てそれでおしまいではなく、ネットに不慣れなお年寄りなどにも声をかけて、地域で身を守る行動につなげていくことが、求められている。