溺れたら「浮いて待て」そのコツ解説します
今年も海水浴シーズンが始まった。来週から夏休みに入る学校もあって、海などに出かける人も多いのではないか。しかし、この時期は水の事故が増えることもあり、注意が必要だ。
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。12日のテーマは「命を守る工夫」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
今月10日、三重県大紀町で友人と川で水遊びをしていた男子高校生が溺れ、死亡する事故が起きた。水の事故は去年、全国で1450件起きていて、事故にあった1635人のうち780人が死亡している。
――安全に遊ぶためには、どうすればいいのか。
水難学会の斎藤秀俊さんは「海や川など水辺に行く時にライフジャケットを着用することが、命を守るために最も有効」と話している。ライフジャケットを着ていれば、基本的には半永久的に浮いていることができるという。
――ライフジャケットを着ていなかった場合は、どうすればいいのか。
その答えは「浮いて待て」
埼玉・白岡市立西小学校で今月8日、「溺れそうになった時にはどうしたらいいのか」消防士などが小学4年生に講習を行った。その名も「ういてまて教室」。この学校では、この講習を約10年前から取り入れていて、生徒たちはあおむけで空のペットボトルをおなかに抱え、浮く練習をした。
――助かるまで浮いて待っているだけなのか?
川や海などで溺れたり流されたりした時は、つい叫んで助けを呼びがちだが、そうするのではなく、ただただ浮いて救助を待つことが大切だという。
消防庁によると、救急隊は通報を受けてから平均して8.6分で到着する。無理に泳ぐと体力を消耗し、余計に溺れてしまう可能性があるので、助けが来るまで浮いて待っていたほうがいいという。
ただ、浮く時にも注意が必要だ。水難学会によると、人体は水よりも軽いため、息を吸った状態であれば、体の2%は必ず浮くという。
その中でどこを浮かすかが問題で、助けを呼ぼうとして手をあげたりすると、浮くことができる2%がこの部分になってしまうので、横になって口や鼻を水面より上に出すことで呼吸を続けることができる。
――上手に浮くためのコツはあるか。
水難学会によると、上手に浮くためのポイントは3つある。
「全身の力を抜き、あごを少し上げる」
「手足は広げ、体を反らす」
「服や靴は脱がない」
浮いている間は服や靴は浮力になるので、脱がなくていいという。
――友達や家族が溺れた時、周りの人はどうすればいいのか。
まずは「浮いて待て」と呼びかける。また、ロープなどがある場合は、投げて渡す。この際、自分で直接救助には行かず、プロに任せることが重要だ。これは、実際の事故では、最初に溺れた人を助けようとして水に入った人が溺れ、死亡することが非常に多いためだ。
救助の連絡は、川・池・海辺の場合は消防の「119番」に、岸から離れた海上の場合は海上保安庁の「118番」に通報する。
消防などの到着を待っている間は、ペットボトルやリュックサック、サッカーボールといった浮くものを投げ渡し、少しでも浮いて待つことの助けになるようにすることが大切だ。救急隊が到着するまで声をかけ続けることも、浮いている人の不安を減らすことに効果的だという。
今回のポイントは、「『もしも』の時も冷静に」。水の事故の場合、溺れた人も周りの人もパニックになってしまいがちだが、ちょっとした工夫で命を守ることができる。「もしもの時」も冷静に対応するために、しっかりと準備して楽しく遊びたいものだ。