“お気持ち”表明 「生前退位」にじませる
天皇陛下は8日午後3時から「お気持ち」を表明された。「退位」について直接的に触れなかったものの、生涯にわたり天皇であり続けることへの懸念を示すなど、「生前退位」についての思いが言外ににじみ出たものとなった。
「本日は、社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、私が個人として、これまでに考えて来たことを話したいと思います」
午後3時に公表された「お気持ち」についてのビデオメッセージの中で、天皇陛下は厳粛な表情で約11分にわたり語りかけられた。
今回「お気持ち」表明に至ったことについては2003年以降、受けた前立腺がん、心臓冠動脈の2つの手術や高齢による体力低下のために将来の公務に不安を感じるようになったことを挙げた上で、こう述べられた。
「既に八十を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」
そして、天皇の高齢化に伴う対応策について、まず公務を減らし続けることは「無理があろうと思われます」と述べられた。次に天皇を代行する「摂政」を置くことについては「天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。」と指摘し、「務めを果たしてこそ象徴天皇」というご自身の信念とは異なることを示唆された。
さらに天皇が健康を崩し、深刻な状態になった場合の社会に与える影響や「大喪の礼」など1年間続く喪儀に関連する行事と即位に関する行事が同時に進行する負担の大きさを「非常に厳しい状況」と自らの経験をふまえて語り、「こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります」と述べられた。
これは生涯にわたり天皇であり続けることへの懸念ともとらえることができる。お言葉の中で、陛下は憲法上、国政にかかわらないという立場から「生前退位」について直接的に言及されなかった。しかし、言外には数年前から持たれていたという「皇太子さまに天皇の位を譲りたい」という意向を各所ににじませていて、「国民の理解を得られることを、切に願っています」と締めくくられた。