×

育休延長?早期復職?それぞれのメリットは

2016年9月9日 18:55
育休延長?早期復職?それぞれのメリットは

 インターネットを中心に話題となった出来事の中から「もっと」知りたいニュースを取り上げる「news every.」鈴江奈々キャスターの「MOTTO」。

 今月、政府が審議に入る育児休業を延長する方針に賛否の声が上がっている。育休を延長するのか、育休を短くして早く復職するのか、企業も対応が分かれている。そのわけを取材した。


■育児休業期間が延長?

 訪れた都内の保険会社・明治安田生命では、育休からの早期復職を進めている。この会社に勤めている青木さんに話を聞くと、「出産後3か月ちょっとで復職させていただきました」と語った。

 早く職場に復帰する女性が増えているというこの会社だが、国は待機児童対策として、育児休業期間を現在の最長1年半から、2年程度に延長する方針をまとめている。

 ネットでは、「復職…想像だけで白目」「あーやっぱり働きたい」「仕事はすっかり浦島太郎だよ」といった声が聞かれ、ツイッターでも育休関連の書き込みがこの一週間で約4000件あった。街の人に話を聞くと、政府の方針に賛否両論だった。


■女性は貴重な戦力

 受け入れる企業側の対応も様々だが、そこにはどんな事情があるのだろうか。

 早期復職した青木さんは、9か月の男の子と2歳の女の子の母親だ。2人の子どもを保育園に預け、電車で出勤する。今年1月に出産し、約3か月で職場に戻った。青木さんはこう話す。

 「職場から離れるブランクが少ない方が仕事にも戻りやすい」

 早期復職した理由のひとつが、会社で今年4月に始まった支援の仕組みだ。これまで育休から復職した女性に対し、保育料補助として毎月1万円が支給されていたが、早期復職者には、5000円上乗せされることになった。

 明治安田生命ダイバーシティ推進室・長谷川室長は「休んでいる方のカバーは結構厳しいんですね。早く復職してもらうほうが会社としてはありがたい」と話す。

 この制度によって、“女性が貴重な戦力”だというメッセージを社員に伝えたいという。


■“育休”最長3年…会社にデメリットは?

 一方、ブライダル事業を手がけるノバレーゼでは、最長3年の育休をとることができるようになった。この会社で育休をとっている早川さんは、今年2月に生まれた長男・凛一くん(6か月)の育児に追われている。育休が3年とれるため、保育園も余裕を持って探せるという。早川さんはこう話す。

 「(保育園の)預け先がなくて仕事を辞めないといけないとか、そういうふうにならなくていいのは本当に安心の材料だと思う」

 そんな早川さんがスマートフォンで見ていたのは、会社が育休中の社員のために用意したウェブサイトだ。早川さんは「新しいスタッフが来たんだなとか、会社のスタッフの顔を(育休中にも)見られるので、精神的にも安心します」と語る。

 ただ、休業が長期にわたることで、会社にデメリットはないのだろうか。ノバレーゼ人材戦略部の三木部長はこう答えてくれた。

 「キャリアがあるスタッフが、しっかりと育児をした上で新しい経験を積んで戻ってくることによって、より会社としての土台がパワーアップしていく。非常にメリットの方が大きいと思っています」


■“育児と仕事”両立のための選択肢

 早期復職と育休延長のメリットについて整理すると、早期復職した場合は、本人にとっては、ブランクが短くキャリアプランに支障が少ない。企業としては、人材確保の見通しがたてやすく、同僚の負担も少なくできるという。

 一方、育休延長をした場合は、本人にとっては、保育園探しを含めストレスなく育児に専念できる。企業としては、育児が落ち着いた状態で女性が復帰することで、安定した職場環境が作れるとみているようだ。

 育児と仕事の両立のさせ方は、個人の家庭環境などによって変わってくるので、こうして選択肢を増やすことで、育児、仕事どちらにも前向きになれるのではないだろうか。


■重要な“仲間の意識”

 どちらの制度もうまくいくためには、職場の仲間の意識が重要だ。延長した人については、長期のブランクを感じさせないように、ケアしながら温かく迎え入れること、そして、早期復職する人については、本当にそれを望んでいるのか、無理はないかといった点を周りがしっかりと見ていくことが大事だ。