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企業・自治体も参加 広がる健康管理のいま

2016年7月19日 17:47
企業・自治体も参加 広がる健康管理のいま

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。19日のテーマは「体は資本」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。


■午後8時以降の残業を原則禁止にした総合商社
 午前7時半、総合商社・伊藤忠商事に出勤してきた社員たちが続々と食堂に立ち寄っている。食堂には、バナナやおにぎり、パンなどたくさんの軽食が置かれている。

 伊藤忠商事では約3年前から午後8時以降の残業を原則禁止し、朝型勤務の制度を導入している。午前5時から8時までに出勤すると、約30種類の軽食の中から1人3つまで無料で食べられるという。

■純利益が“トップ”に
 なぜ、朝型勤務をこれほど勧めているのか。伊藤忠商事では、深夜まで長時間働くよりも早朝から限られた時間内で効率的に働くことが生産性を高めることになると捉えているからだ。

 実際、これまでに残業時間を約12%削減できたということだが、会社の純利益を見ると、今年3月期の決算で初めて国内総合商社のトップになるなど、働き方の改革が業績にも影響しているとみている。社員が健康になるだけでなく、企業にも良い影響が出るということだ。


■健康憲章とは
 さらに伊藤忠商事は先月、「健康憲章」というものを制定した。社員が自ら健康に責任を持ち、それを会社が支援するということなどを定めたほか、社員の禁煙治療費についても会社が全額負担することを始めた。

 会社はこれを「福利厚生」ではなく、「経営戦略の一環」と位置付けている。これは企業にとってもアピール材料になりそうだ。


■健康経営銘柄
 経済産業省と東京証券取引所では昨年から、社員の健康を会社が主導して守ろうと取り組む企業を「健康経営銘柄」として公表している。

 今年の「健康経営銘柄」は住友林業やローソン、TOTO、日本航空など25社が選ばれている。社員の健康力をアップすることで中長期的に企業価値が向上する可能性があることを投資家に紹介することが狙いだという。


■「脱メタボ」の新たな取り組み
 さらに、経産省では企業と協力して今月から社員の「脱メタボ」のために新たな取り組みを始めた。

 糖尿病の疑いや予備軍と思われる社員を対象に同意を得た上で、スマートフォンなどを使ったウエアラブル端末で日々の体重や歩数を記録し、データベース化する取り組みだ。この数値が悪化した場合には、産業医などが指導を行うという。

 この取り組みにはトヨタ自動車やみずほ銀行の社員など1140人が参加しているという。


■自治体にも広がる“ウエアラブル健康管理”
 こうしたウエアラブル端末を使っての健康管理は、自治体でも広がっている。

 東京都板橋区では、歩数だけでなく歩行時間なども記録できる「活動量計」で記録した歩数を区の体育館などにある機械で読み取り、体重や体脂肪率などのデータとあわせて「からだカルテ」を作成するシステムを作っている。カルテのデータは自宅のパソコンでも見ることができ、数値の変化をチェックできるという。

 板橋区では、3000円ほどの費用でこの健康プログラムに参加でき、これまでに915人が参加しているという。

 また、新潟県長岡市でも同じ活動量計を利用し、歩いた歩数にあわせて「健康ポイント」がたまる仕組みを作った。「健康ポイント」をためることで、商品券やコメ、野菜、健康グッズなどと交換ができる。

 また、市内にあるカフェや温泉施設でカロリー控えめのヘルシーメニューを注文することでも、健康ポイントがもらえるという。


■健康は社会の“責任”
 健康は、本人や家族の幸せであることはもちろんのこと、企業の生産性を高め、社会全体の医療費を減らすことにもつながる。健康管理を個人だけに任せるのではなく、いかに社会全体で促し、サポートしていくか。会社や自治体にとっても大切な責任の1つだ。