もんじゅ廃炉へ?1日の維持費5000万
■「もんじゅ」とは?
福井県にある高速増殖炉“もんじゅ”の廃炉をめぐって、政府が21日夕方、関係閣僚会議を開く方向で検討していることがわかった。廃炉となれば、今後の原子力政策が大きく変わるかもしれない。そんな“もんじゅ”に関してみなさんはどこまで知っているだろうか?
まず、もんじゅは“原発”なのか…もんじゅは“原発”だ。ただし、もんじゅは、まだ実験段階で今は発電していない。したがって、私たちの家庭に電気を供給する「発電」を目的にしている他の“原発”とは少し位置づけが違う。
続いて、もんじゅという名前の由来…これは「三人寄れば文殊の知恵」、の文殊で、知恵をつかさどる菩薩(ぼさつ)の名前だ。難しい技術を制御しなくては、との戒めをこめたといわれている。
さらに、もんじゅは“夢の原子炉”と呼ばれるような仕組みを持っている。どういう仕組みかというと、通常の原発は、ウランを原料に発電し発電後には、使用済み燃料が出る。これはつまりゴミで、高い濃度の放射性物質を含んでいるため、処分先がまだ決まっていない。
しかし、これを工場で再処理して取り出したプルトニウムをもんじゅの燃料として使うと将来的には発電して、プルトニウムが出てくる。これをまたもんじゅに使えば発電して、出したものでまた発電してというふうに、ぐるぐる回りながら発電できることになる。このサイクルがうまくいけば、今はほとんど輸入に頼っているウランを輸入する必要性も低くなるので、エネルギーの自給という面でも重要な意味がある。
■トラブル相次ぎ…22年間で稼働は250日
しかし、安全面で大きな問題がある。運転開始の翌年1995年にはナトリウムが漏れるという放射能漏れにつながりかねない重大事故が発生。その後も機器の点検漏れなどトラブルが相次ぎ、運転開始以来、22年間で実際に稼働したのは250日しかない。さらに、こうして22年たつ間に“時代遅れ”の技術になってしまったという専門家の声もある。
それでは廃炉にする流れに前々から決まっていたのかというと、そうではない。実は、原発を所管する経産省と、もんじゅのような研究を所管する文科省とで、「廃炉やむなし」「廃炉せず維持を」と“綱引き”がされてきたのだ。
■維持費は1日、5000万!つぎこんできた事業費1兆円
それぞれどんな主張かというと、経産省は、もんじゅを維持するのに1日に5000万円がかかっていることをあげ、稼働しないものに莫大な費用をかけていると批判している。これに対し、文科省は廃炉にすれば既につぎこんできた1兆円もの事業費を無駄にすると主張。「廃炉反対」の政府関係者は、「これだけ金を使っているのだから何も成果ありませんでしたでは終われない」と本音を漏らす。
さらに、サイクルの研究を続けるべきというのは両者一致しているが、経産省側は、フランスとの共同研究や別の施設での研究で十分とし、もんじゅは不要だと主張する。これに対し文科省は、フランスの施設は型が違うため、共同研究といっても実質的には意味をなさないと指摘する。両者、折り合いがつかない状況が続いていた。
ある官邸関係者は「文科もこうしたい、経産もこうしたいとみんな自分に都合のいいことをいっている」と嘆く一方で、政府関係者の間では「安倍政権は経産省の影響力が強い政権だから、『廃炉やむなし』という経産省の言い分が通るだろう」との見方がある。
■エネルギー政策の全体像を描くべき
福島第一原発事故後、必要電力量が下がったり、原発依存度を減らしたりと前提が大きく変わっている。もんじゅが廃炉となれば、別の原発の再稼働にむけた動きが加速するとの見方もあるなか、もんじゅをめぐる問題は、エネルギー政策の全体像を描いた上で決める必要があるのではないだろうか。