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なぜ人里近くまで…“クマ襲撃”相次ぐワケ

2016年10月11日 20:37
なぜ人里近くまで…“クマ襲撃”相次ぐワケ

 全国で人がクマに襲われる被害が相次いでいる。今年は、昨年に比べてクマが人里近くまで出てくるケースが増加していて、環境省が一般の人向けに、初めてクマの被害を防ぐパンフレットを公開した。山で何が起こっているのだろうか。


【今年のクマ出没事例】

■石川県では5月、畑の中を逃げ回っているクマが撮影された。民家に逃げ込み、一時騒然となったが、無事に捕獲された。

■神奈川県・相模原市では6月、畑に突然クマが現れた。近隣住民が撮影した映像には、その時の緊迫した様子が収められている。

■秋田県・男鹿市では5~6月にかけて、4人が死亡した被害が出た。駆除されたクマの胃袋からは人の体の一部が見つかった。

■山形県・大江町では7月、体長1メートルほどの雄のクマがワナにかかった。荒ぶった様子のクマが撮影されている。


【10月に入ってからも―】

■石川県・金沢市では10日、登山道を歩いていた女性(67)がクマに襲われ頭や腕などに大けがをした。

■宮城・仙台市では10日、市内の川沿いを散歩していた男性(83)がクマに襲われた。被害にあった男性は、持っていた杖(つえ)で殴りクマを撃退したという。しかし、その体には、生々しい傷痕が残されていた。

■鳥取県・八頭町では11日、クマがワナにかかったと聞き、取材班が向かったが、着いた頃には、檻(おり)の中は空っぽだった。何かの拍子でロックが外れたとみられている。クマを発見した人によると「遠目だったが、かなり大きかった」という。


【環境省は対策パンフレットを初公開】

■こうした事態を受け、環境省は今年初めてクマの被害を防ぐパンフレットを公開した。

■鼻や耳がよく学習能力が高いなど、特徴を知った上でクマと出会わないために、鈴やラジオなど音の出る物を携帯することや、出あってしまった場合は、ゆっくりと静かに立ち去ることなどの対策が書かれている。


【ブナの実が少ないと人里へ―】

■今年、相次いでいるツキノワグマの目撃情報。なぜ、人里にクマが現れるのか。その理由とは山の“ある異変”だった。

■森林総合研究所・新山研究専門員「昨年ブナが豊作だったので、今年の春に出産数が増えて、母グマが子グマを連れて、エサをとるために活発に動き回る」

■主食となるブナの実が豊作だった年は、母グマが十分に栄養をとれるため、翌年たくさん子供を産み頭数が増える傾向にあるという。

■しかし、専門家によると、今年の東北では、クマの頭数が増えているにもかかわらず、ブナの実が少ないという。そのため、エサを求めて、クマが人里に現れる回数が増えているという。


【去年の2倍ペースで増加】

■実際、東北では、ブナが豊作だった翌年には捕獲数が増加する傾向にあり、今年度は8月時点ですでに去年の2倍近い849頭が捕獲されている。

■ツキノワグマは、雪が降り積もり始めると冬眠するということだが、現在は活発にエサを求めて行動しているため、山に入る際は、十分な注意が必要だということだ。