“バズる大使”が見た園遊会――外交団にも貴重な機会
■パリ・オリンピック、パラリンピックの金メダリストたちが招かれた秋の園遊会
――お天気にも恵まれて、女性皇族の和装も華やかでしたね。
はい。焼き鳥やジンギスカンなどの料理が、コロナ禍後、初めて出され、皆さん楽しまれたと思います。
――見るからに美味しそうですね!
園遊会は1880(明治13)年、明治天皇が外交団を招いて催した菊を見る会がルーツで、今も駐日大使らが招かれています。
■SNSで“バズる大使”が見た「園遊会」
今回、出席した外交団の1人に、ジョージアのティムラズ・レジャバ駐日大使がいます。
――SNSで「バズる大使」として有名な方ですね?
はい、そうです。ジョージアは黒海に面し、ロシアとトルコに挟まれた国です。大使は日本の高校、大学で学び、日本企業で働いた経験もあります。大使館に訪ね、園遊会の感想などをうかがってきました。
井上:「とても天気が良くて、女性皇族方、皆さん和服を召して、珍しい機会だったんじゃないでしょうか」
レジャバ大使:「そうですね。私たちが日本を感じる意味で、お庭もきれいですし、とても清々しい気持ちで参加できますから、当然非常に貴重な機会であります。日本側の皆様はですね、和服でいらっしゃった。それと全くそのままの気持ちで、私は自国を表す民族衣装『チョハ』というんですけれども、それで参りました。実は前回、雅子さまから『この衣装は何ですか?』ということを聞いていただいたこともあったので、やっぱり自分の国を表す良いきっかけにもなった」
こちらがその「チョハ」ですが、映画『スター・ウォーズ』の「ジェダイの騎士」のようだと話題になりました。
――確かに「ジェダイの騎士」もそうですが、魔法学校にも登場しそうな服装ですね。
■園遊会を通して広がる親善――外交団にとっても貴重な機会
また、大使はジョージアで盛んな柔道やレスリングの選手たちとも交流されたそうです。
レジャバ大使:「柔道の金メダリストもいらっしゃったので、思わずお声がけしました。(男子81キロの)永瀬選手においては、ジョージアの選手と確か金メダル争いをしたということもあって『おめでとうございます、次回は必ずこっちが勝ちますよ』と」
レジャバ大使:「あとはレスリング(女子)の日本の金メダリストが『ジョージア、レスリング強いですね』ということも言ってくれたし、皆さん揃って着物の姿だったので、とても綺麗ですねと。『でも皆さん本当はすごく強いんですね』って言ったら、『はい、強いです』と言われてですね」
――永瀬選手は決勝でジョージアの選手を倒しての金メダルだったということで、素敵な交流ですね。
園遊会でこういう交流があるとは思いませんでした。外交団の人数が多いことから、大使一人一人が両陛下と話をする機会はなかったようですが、アイコンタクトであっても、両陛下と接する機会は貴重な場だったようです。
レジャバ大使:「ものすごく貴重な機会ですね。特に各国の大使の気持ちというか、皆同じようにとても敬意を持って参加するので、逆に外交団が何か一体感が出て、皆日本で今外交をしていることを、一番よく確かめられる、そういう機会だと捉えております。この園遊会や、皇室の行事というのは、『平和』というメッセージがおのずとついてくる。敵国同士でもやはりそういう場で一緒になると、絶対に争いが良くない、そういう気持ちも、無意識に生まれるんじゃないかなと。私はそういったメッセージ性も感じます」
レジャバ大使:「日本の皇室というのは、日本で生活していると、もちろん日常的に皇室の動きが、おそらく生活に影響していると感じることはないと思います。ただ、正月だったり、天皇誕生日だったり、そういった折に、皇室の動きに触れる機会には必ず皇室があってこその日本なんだなと」
園遊会のニュースでは、両陛下と話題の人たちとのやり取りが注目されますが、レジャバ大使にお話を聞いて、園遊会は外交団の方々にとっても貴重な機会であることを知りました。今回、大使とメダリストとのやり取りを知って、園遊会を通して広がる親善についても注目したいと思いました。
――国を超えての交流もあるということなんですね。
【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)