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成人年齢引き下げで「消費者被害広がる?」

2016年11月18日 19:27
成人年齢引き下げで「消費者被害広がる?」

 いま、日本の民法が定める成人年齢は20歳だが、これを18歳に引き下げるための議論が進んでいる。すでに、今年夏から選挙権が18歳に引き下げられたため、それを他の法律にどこまで広げるかが問題になる。


――成人となれば飲酒や喫煙も認められるが、これも18歳に引き下げられるのか。

 自民党の特命委員会は去年、それらの解禁年齢を20歳から18歳へ引き下げることを議論したが、様々な団体から反対意見が相次ぎ、結論を先送りした。

 その一方で、未成年者の刑事責任を軽減する少年法については、対象年齢の引き下げを支持する声も出ている。特に選挙権を与えた以上、18歳や19歳の選挙違反については、成人と同様に厳しく処罰すべきだという意見がある。

 そんな中、成人年齢が引き下げられた場合、社会経験の乏しい18歳、19歳の若者に消費者被害が広がる懸念があることから、内閣府の消費者委員会は今月15日、被害の防止策などを検討する会議を開いた。来月にも、報告書をとりまとめることにしている。


――「消費者被害が若者に広がる懸念」とは、具体的にはどういったものなのか。

 民法によれば、未成年者が契約を結ぶ場合は、親権者の同意が必要で、同意なしに結んだ契約は後から取り消すことができることになっている。現在は成人年齢が20歳になっているから、19歳以下の若者の消費者被害は、この「取消権」によって守られている。

 国民生活センターに寄せられた消費者トラブルの年齢別の相談件数を見ると、18歳や19歳に比べ、20歳を超えると消費者被害の相談件数が増えている。やはり、民法の未成年者保護の規定が、若者から悪質な業者を遠ざけていると考えられる。


――だとすると、成人年齢が18歳に引き下げられれば、若者の消費者被害は増えてしまいそうだが。

 18歳や19歳になると、給料やアルバイト代をもらっている人も多いし、親元を離れている人も増えるので、消費者被害は起こりやすい。

 現在の成人の被害を見てみると、「マルチ商法」や「悪質エステ」をめぐるトラブルなどが増えてくるのが特徴で、契約の金額も高額になっている。仮に成人年齢が引き下げられると、18歳、19歳の若者に、こうした被害が広がることが懸念される。


――そうした話を聞くと、18歳、19歳の若者に「取消権」を保障した方が良いように思えるが。

 一方で、こんな議論もある。選挙権が与えられたということは、18歳、19歳の選挙運動も保障される必要がある。仮に、子供が親の支持する候補者とは別の候補者を応援するため、その候補者の秘書として勤め始めた場合に、親が「取消権」を行使し、契約を取り消せるというのは不合理だとの考えから、民法の成人年齢も18歳に引き下げるべきだという意見がある。


――この対立を解決することはできるのか。

 今回のポイントは「若者を守る新たな手段」。法務省は民法改正案を早ければ来年の通常国会に提出することを検討していたが、ここに来て風向きが変わってきている。民法改正に対する意見を公募したが、約9割は「支障がある」というものだった。理由は、やはり消費者被害などへの懸念だった。

 従って、もし民法の成人年齢を引き下げるのだとすれば、これまでとは異なる方法で若者の消費者被害を防ぐ方法を考えなければならない。例えば若者が締結する契約については、幅広くクーリングオフの制度を認めるなど、工夫が必要になると思う。

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