実用化前にルール作りを「自動運転」の課題
秋田県仙北市で今月13日、国内で初めてとなる自動運転のバスの走行実験が行われた。2020年までに実用化を目指すという。
こうした自動運転の本格運用に向けたルール作りが進められている。大阪市で22日、ドイツやイギリス、韓国など世界各国の自動運転の技術担当者が集まり、国際会議が開かれた。自動運転の技術基準は各国でばらつきがあるため、統一のルール作りに向けて話し合いが行われた。
そもそも自動運転には、いくつかのレベルがある。
運転内容には主に「ハンドル」「アクセル」「ブレーキ」の3つがある。いずれか1つが自動の場合は「レベル1」。3つのうち、いずれか複数が自動の場合は「レベル2」。(現在の日本で実用化しているのは「レベル2」)
3つの操作全てが自動の場合は「レベル3」となる。(場合によってはドライバーが操作して対応)
「レベル4」が完全自動運転。つまり、ドライバーが運転に全く関与しないレベルになる。
――「レベル4」の実用化は近いのか。
日本では道路交通法上、今はまだ難しい。日本やアメリカなどは「ジュネーブ道路交通条約」を締結しているが、これは運転手が同乗していることを前提とした条約のため、今はドライバーのいない自動運転は認められない。
これに対し、主としてヨーロッパの国々が締結している「ウィーン道路交通条約」では2014年に改正案が採択され、条件付きながら「レベル4」の完全自動運転が認められた。
いずれの条約にも加盟していない中国なども「レベル4」の自動運転を開発する中、今後、日本やアメリカはどうしていくのか注目されている。
■事故が起きたら「責任は誰に?」
その一方で、自動運転中に事故が起こった場合の責任についても、ルール作りが急がれている。
今年5月、アメリカ・フロリダ州で自動運転モードの乗用車が交差点で左折しようとした大型トレーラーに衝突し、乗用車の運転手が死亡する事故があった。自動運転モードの車による死亡事故は初めてだという。
――事故原因は、自動運転によるものなのか。
事故当時、強い日差しがあり、衝突した白いトレーラーへの自動ブレーキ機能が反応しなかったことが原因とみられている。
一方で、ドライバーは自動運転モードに運転を任せ、車内でDVDプレーヤーを使って映画を見ていたとみられていて、アメリカの運輸当局が詳しい原因を調査している。
――原因がどこにあるかが難しいケースの場合、日本ではどう対応するのか。
日本の現在の道路交通法には「運転の責任はドライバーにある」と定めていて、自動運転については書かれていない。
そこで警察庁は自動運転で事故が起きた場合に備え、自動運転のレベルに応じた責任の在り方を検討している。まず、刑事責任は、警察庁の検討では「レベル1」と「レベル2」までは従来通り、「ドライバーに責任がある」としている。
全ての操作が自動となる「レベル3」の場合は、ドライバーの予見可能性、つまり事前に予想することができたかなどによって、「ドライバーか、メーカーなどの過失責任か、分かれる」と指摘している。
一方、事故の被害者への民事責任については、国交省でも議論が始まったばかりだが、基本的に「自動車損害賠償保障法」によってドライバーと車の所有者が責任を負うことになっている。
ただ、自動運転の場合だと、「真のドライバーは人工知能ではないのか」とも考えられ、人工知能の開発・運用をする会社の責任がどうなるのかということも検討課題になる。技術を生かすためには一刻も早いルール作りが必要となる。
■ルール作りも国際競争
いくら技術の面で世界をリードしても、ひとたび日本に不利なルールが作られてしまうと、せっかくの技術を生かすことができない。
残念ながら、こうしたルール作りの面での日本の国際競争力は必ずしも十分とは言えないのが現状だ。官民一体となって、世界のルール作りをリードしていきたいものだ。