一陽来復 改めて知りたい「冬至」のコト
「一陽来復」――12月21日は「冬至」。一年で最も昼間の時間が短い日だ。「一陽来復」は冬至を表す言葉だが、冬至を境に徐々に日が長くなることから、「悪いことが去って、いいことが巡ってくる」という意味がある。
東京・新宿区にある「放生寺」では、21日から「一陽来復」にまつわるご祈とうなどの行事を行う。このため、お札を求めて地方からも多くの参拝客が訪れる。
放生寺では、冬至を境に「福」が来るようにと、「一陽来復」の「復」の字を、幸福の「福」の字に変えているという。
――冬至を境に日が長くなるのに、これからますます寒くなっていくのは、ちょっと不思議な気がするが。
11月から3月の30年間(1981年~2010年)の東京の平均気温を見ると、冬至を過ぎても、1月は5.2℃、2月は5.7℃と気温が低い。これは、この時期、シベリアから来る寒気の影響で、1月から2月にかけて徐々に日本に冷たい空気が流れ込んでくるためで、日が長くなっても空気は暖まらずに厳しい寒さとなる。
■ゆず湯は温まる?
そんな厳しい寒さを乗り切るために、冬至には「ゆず湯」という習慣がある。冬至のゆず湯は、江戸時代に銭湯で行われたのが始まりと言われている。ゆず湯に入れば「一年間、風邪をひかずに過ごせる」などと言われている。
「ゆず湯は温まる」と言われているが、ゆず湯は実際に体を温めてくれる効果がある。
東京ガスが行った実験によると、ゆず湯と普通のお湯=さら湯に10分間入浴した時の皮膚の表面温度を比べたところ、ゆず湯のほうが1℃以上温度が高くなり、お風呂から出た後も、この温かさがずっと続いていることが分かる。
東京ガスによると、ゆずに含まれるリモネンなどの精油成分が保温効果を高めているという。
■冬至に食べる「ん」の食材
「冬至に食べると体にいい」と言われている食材もある。「なんきん」と呼ばれる「かぼちゃ」の他に「にんじん」「れんこん」「ぎんなん」「きんかん」「かんてん」がある。
実は京都など関西の一部の地域では「ん」が2つ付く食材を食べると縁起がいいと言われている。この言い伝えについて、民俗学に詳しい武蔵野学院大学の林猛教授は「冬至に『ん』のついたものを食べると運気が強くなると、おまじないのようにみんなが考えて広がったのではないか」という。
「この冬を健やかに」――これから寒さが厳しくなるが、冬至のゆず湯など、昔からの知恵などを生かし、この冬を健やかに乗り切りたいものだ。