お茶しながら死を語り合うデスカフェって?
「自分が死んだらこうしてほしいというのは、あとに残していく人のためには伝えていきたい」
「生きるにも誇りが必要だけど、死ぬのにも誇りが必要だなと」
先週末、東京・品川区で40代から70代の14人が集まり、こんな話し合いが行われた。これは「デスカフェ」と言って「死」について語り合う集まりだ。
参加したのは、実際に身近な人を亡くした経験がある人や、親が末期ガンだと医師から告げられた人、親の介護をしている人など。理由は様々だが、互いのことをよく知らない人たちが集まり、「死」というテーマについて話し合った。参加者に話を聞いた。
40代男性「死については、絶対に自分にとっても起こるものだから、いろんな方々の考え方を聞くことができて勉強になったなと」
50代女性「こういうこと話したら、人に引かれるなっていうような死生観とか宗教観とか、そういうものを話しても、みんな『そうなんだ』って納得して聞いてくれる」
40代女性「周りとの関係も、悔いを残しちゃダメなんだというか、大切にしたいなっていうのを改めて思いました」
重いテーマだが、参加者は明るい雰囲気で話している。中には話し足りないという人もいたという。
デスカフェは、死について研究していたスイスの社会学者のバーナード・クレッタズ氏が、妻の死をきっかけに約10年前に始めた。
デスカフェでは、ケーキを食べたりお茶を飲んだりとリラックスした雰囲気の中で「死」について自由に語り合う。欧米を中心に広まり、今ではイギリスなど40か国以上で開かれているという。
■若い人ほど「死ぬのが怖い」
経済産業省が2012年に発表した「死ぬのがとても怖い」と感じている人の割合を年代別に見てみると、「あてはまる」「ややあてはまる」と答えた人の割合は、若い人ほど高くなっている。
70歳以上が36.2%なのに対し、30代は54.7%と半数を超えていて、若い人ほど「死ぬのがとても怖い」と死に恐れを感じていることがわかる。
■お坊さんがデスカフェ開催
そんな中、福岡県にある覚円寺の僧侶・霍野廣由さんが作った、全国の若手のお坊さんたちによるグループ「ワカゾー」もデスカフェを開催している。2015年から大阪や京都で開催していて、クレヨンで死のイメージを表現したり、理想の死に方を話し合ったりしているという。
ワカゾー主催のデスカフェでは、参加者の7割が20代だという。霍野さんは「若い世代は、死について漠然とした不安があるのではないかと感じる。回数を重ねるごとに若い人が集まってくれて驚いた」と話している。
核家族化して死が身近でなくなった現代。死に触れる機会が少なくなったことで、若い世代は不安を感じているのかもしれない。
死別を経験した人たちの心のケアなどを行う日本グリーフケア協会の宮林幸江会長は「デスカフェは“死”というものを知る入り口のような場所。自由に話し合うことで誰にでも訪れる死のショックを和らげる力になる」と話している。
■分かち合う
医学の進歩で生きる時間が長くなったことで、人生の終わりの時間を意識するようになったのかもしれない。誰にでも必ず訪れる死。それぞれの思いを分かち合い、誰かの肩にそっと手を置くことが出来たらと思う。