最新鋭の装置で防げ!高齢者の踏切事故
2日、愛知県安城市のJR東海道線の踏切で、普通列車と乗用車の衝突事故があった。乗用車は炎上し、運転していた男性が死亡した。踏切事故をゼロにするにはどうすればよいのか。野村修也氏が解説する。
■高齢者の踏切事故の実態
東京都内でも、先月1か月間だけで踏切での事故が3件発生し、3人の高齢者が亡くなった。都内では過去およそ10年間、踏切内の事故で46人が亡くなっているが、約半数の22人が高齢者だった。こうした事故の発生を受けて、警視庁が緊急の対策会議を開いた。
2月22日、警視庁が国交省や鉄道会社とともに開いたのは、踏切事故を防止するための“緊急踏切事故防止対策会議”。利用者に安全な歩行について指導していくことや、障害物を検知するシステムの設置などについて話し合われた。国土交通省では、これまでに14の対策を提案している。
■国交省の対策は?
国交省は、普通の歩行速度では、踏切を約15秒で渡ることができるとしている。しかし、国立長寿医療研究センターによると、75歳以上の女性の場合、歩行にかかる時間は約1.3倍ということなので、19秒ぐらいかかるという計算になる。
そういう方などへの対策として、複数の線路を渡らなければならない踏切では、線路と線路の間に避難のためのスペースを作るというものだ。
別の対策では、高架の上に電車を走らせ踏切自体を無くすというものもある。実際にこのような対策で、踏切の数は少しずつだが減少傾向にある。
■最新鋭の技術も…様々な対策
ただ、踏切の数が減ったとしても、事故がなくなるわけではない。そこで、鉄道会社も事故を防ぐための様々な取り組みを行っている。
神奈川県にある京急電鉄の“京急川崎駅”付近の踏切では、押せば斜め上にあがる仕組みになっている遮断かんがある。万が一、線路内に閉じ込められた場合、遮断かんを押して線路の外に逃げることができる。
また、踏切の両側に設置された非常ボタンを押すと、赤色に点滅して線路内の閉じ込めなどの異常を電車の運転士に知らせることができる“信号発光機”も。
そして、最新鋭の技術を使った障害物の検知装置も登場している。踏切の上からレーザー光を照射して、縦・横・高さの3次元で障害物を検知する高性能の装置で、踏切の中にいる人などを検知しやすくなっている。ただ、この装置は、設置代を含めると1台につき1000~2000万円かかるため、導入には時間と費用がかかるという問題もある。
■街全体を巻き込む
このような最新鋭の装置を使った対策は、全国隅々まで広げるのは難しい。ただ、踏切は、単に鉄道会社だけでなく、道路を管理する自治体や地元住民、商店街、学校、病院など街全体が関わるものなので、街全体を巻き込んで対策を考えていくことが必要だ。
大掛かりな対策には時間も費用もかかるだろうが、利用者の意識改革はすぐにでもできる対策だ。取り残された高齢者がいたら非常ボタンを押すなど、私たちのできることから対策を進めていく必要がある。