“紙オムツを下水に”検討 本当に大丈夫?
インターネットで話題の出来事を取り上げるMOTTO。今週は、「オムツを下水に」。
介護や子育て現場の負担を減らすため、使い終わった紙オムツを下水道に流して処分できるか、国が今週から検討を始めた。画期的な処分方法だが、下水に流して本当に大丈夫なのだろうか? 紙オムツの処理ではどんな苦労があるのか。取材した。
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都内の薬局に行ってみると、使う人の用途に合わせて多くの種類の紙オムツが売られていた。この店で販売されているだけでも30種類以上。
国が検討を始めた「使い終わった紙オムツを下水道に流して処分する」案は、ネットでも話題となっている。
~「紙オムツ」「下水」ネットの声~
「画期的だけど問題も多そう」「もし詰まったらどうするの?」「流せたら助かるよね」
■オムツ処理、困っていることは“臭い”
子育て中のママたちに、オムツの処理で困っていることを聞いてみた。
――オムツの処理で困っていることは?
0歳児の母親「汚物が出たときにトイレにいちいち流しに行くのは大変」
1歳児の母親「(子供を)一時保育に預けていて、持ち帰りなんですよ。終わったあとのオムツ。でも結構、カバンをあけると臭いがすごくて」
都内の特別養護老人ホームでもオムツ処理の苦労が…
責任者が案内してくれた一角にあったのは、山積みの段ボール。中身は1週間分のオムツだ。約50人の高齢者が生活するこの施設では、1日平均5、6枚のオムツを交換するため、大量のオムツが必要だという。さらに、施設の外にある倉庫の奥には、使用済みの紙オムツが袋に入れられて積まれていた。
特別養護老人ホームみずべの苑・川崎千鶴子施設長「あの奥の袋が。オムツをギュッと固めて、新聞紙でくるんで入れるわけです」
オムツのゴミの回収は週2回のみ。それまで、換気設備が整った倉庫で保管されている。
――オムツの処理で何が一番大変?
川崎施設長「臭いですね。生活の場にあの臭いがまん延すると生活意欲がなくなる。きちんと処理をしないといけない。意外と介護の手がかかっているんです」
大人用紙オムツの生産量は年々増加しているが、高齢化社会が進む中、さらに増えることが見込まれる。
そこで、国が検討を始めたのは、住宅や介護施設のトイレに紙オムツを分解する装置を設置し、使用したオムツをその装置に入れるだけで分解してそのまま下水に流せるという構想だ。
でも、本当に下水に流しても大丈夫なのだろうか? 福岡県にある機械メーカーを訪ねた。
■どうやって"下水に流す”? 課題は?
フロム工業機械設計課・武田拓真主任「こちらがディスポーザーという機械になります」
このメーカーでは、「ディスポーザー」の仕組みを応用して「紙オムツディスポーザー」を開発した。ディスポーザーとは、台所の流し台の下に設置して生ゴミを粉砕する装置で、これにより、生ゴミを下水道などに直接流すことができる。
実際に、「紙オムツディスポーザー」を試してもらった。
下水管に見立てた透明の管の中を、形が分からないほど砕かれた紙オムツが流れていく。粉砕されたものに触ってみると、吸水ポリマーなどが水分を大量に吸ってドロドロした状態になっていた。
紙オムツの量を増やして流してみると、パイプいっぱいに紙オムツが詰まっているような形で流れていく。現状では、下水管に負担がかかることが懸念されているという。
フロム工業・尾畑宇喜雄社長「粉砕そのものは問題はない。ただ、水を含んでものすごく体積が増えますから、これが配管にどう影響するか。これが研究課題になると思います」
一方、オムツを作るメーカーなどが加盟する日本衛生材料工業連合会は、国の取り組みについて、「十分な情報がないのでまだコメントできない」としている。