“iPS細胞で脊髄損傷治療”マウスで成功
慶応大学医学部の研究チームは、iPS細胞と特定の化合物を組み合わせる方法で、脊髄損傷後、時間がたったマウスの足を、リハビリなしで動かす実験に成功したと発表した。
慶応大学医学部の岡野栄之教授と中村雅也教授らの研究チームは、脊髄を損傷して42日たった「慢性期」のマウスの脊髄に、ヒトのiPS細胞から作った「神経のもとになる細胞」を注入する実験を行ってきた。この際、iPS細胞特有の副作用である「がん」を防ぐため、「神経のもとになる細胞」に、ある化合物をふりかけてからマウスに注入したところ、リハビリをしなくても手術後、56日目にはマウスの動かなかった後ろ足が動くようになったという。化合物によって「神経のもとになる細胞」の働きが活発になり、損傷から日がたって固まった脊髄をも再生できることがわかったという。
ヒトの場合、脊髄損傷の「慢性期」とは、損傷後、半年以上経過したことを言う。研究チームは、今回の実験結果は、治療が難しいと考えられてきた「慢性期」の患者も、iPS細胞を用いた治療で運動機能が回復する可能性を示しているとして、「非常に大きな一歩」だとしている。
この研究チームは、脊髄損傷後、2週間から4週間の患者に、iPS細胞から作った「神経のもとになる細胞」を注入して運動機能を回復させる世界初の臨床研究の実施を国に申請する予定だが、将来的には「慢性期」の患者への臨床研究の実施も目指している。