パンダの「リーリー」と「シンシン」中国へ 副園長が語る“返還の裏側”
9月29日に中国に返還された上野動物園で暮らした2頭のパンダ、リーリーとシンシン。2頭を長い間見守ってきた副園長が返還までの裏側を語りました。
上野動物園のジャイアントパンダ、オスの「リーリー」とメスの「シンシン」が29日に中国に到着した時の映像が、30日に公開されました。2匹がいたのは、中国ジャイアントパンダ保護研究センターの施設です。新居に入ると歩き回って確認していました。
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29日早朝、2頭はケージに入れられ上野を出発し、向かったのは成田空港。生まれ育った中国に帰ることになりました。
空港の展望デッキには約500人ものファンの姿がありました。
「ありがとう!」
「シャンシャンによろしく~!」
午前8時、リーリーとシンシンが中国へと飛び立ちました。
パンダファン
「2頭のことを思えば、それ(返還)が正解だと思うんですけど、やっぱり…すごい悲しいなって」
13年前の2011年2月、上野動物園にやってきた「リーリー」と「シンシン」。
上野動物園 冨田恭正副園長
「本当に私たちのことを励ましてくれた2頭だった」
こう話すのは、2頭をそばで見守ってきた冨田副園長です。
2頭が来園した翌月東日本大震災が発生。その影響で動物園は一時休園になりました。その後、園が再開し、2頭が初公開された時には多くの人が詰めかけました。
上野動物園 冨田恭正副園長
「日本で暮らす人たちに暗い影が落ちている時に、本当に感謝だなと思います」
震災で暗くなっていた日本を明るく照らしたリーリーとシンシン。2017年、リーリーとシンシンとの間にシャンシャンが誕生。2021年には、双子のシャオシャオとレイレイも誕生し、コロナ禍のまっただ中だった日本に明るいニュースを届けてくれました。
しかし今年8月、2026年の返還期限を前に、突然、中国への返還が発表されました。その理由は…
上野動物園 冨田恭正副園長
「特にシンシンが、昨年の9月ごろから、血圧標準値が140から160くらいと言われているんですけど、最初確認した頃は 200を超えるくらいだった」
今は19歳でまもなく高齢となる2頭。薬などで治療するも、大きな改善はみられなかったといいます。このため…
上野動物園 冨田恭正副園長
「今年の春くらいから、(返還期限より)先に返した方がいいんじゃないかという議論に。やっぱり、末永く生きていってもらうためには避けては通れないこと」
輸送に耐えられる健康状態のうちに返還することにしました。
最後の観覧日となった9月28日。早朝から長蛇の列ができていました。「リーリー」と「シンシン」の観覧受け付けは午前8時20分に終了。開園の1時間以上前に締め切られるという異例の事態になりました。
涙を拭いながら出てくるファンたち…
パンダファン
「本当に元気でこれからもいてほしい」
パンダファン
「これはシンシンとシャンシャン作りました。ありがとうという気持ち。みなさんを幸せにしてくれたパンダちゃんたちだったので」
上野動物園 冨田恭正副園長
「これだけたくさんの人たちから関心を寄せていただく、応援をしていただける。本当にすごい力を持つ生き物だと教えてもらいました」