絶滅寸前の映画看板“描き手”の思いとは?
絶滅寸前の映画看板師。日本に数人しかいない映画看板をつくる職人・八条祥治さん(62歳)。毎週10枚以上の看板をひとりで描く日々です。
「これなんですけど」――八条さんが見せてくれたのは映画館からの発注書。宣伝文句や文字の配置などが書かれています。
八条さん「(これは)自作、自作コンパスな!」
職人道具のほとんどが手作り。文字の配置を決めたあと――
八条さん「近くではわかりにくいでしょ、このくらい離して…」
完成形を想像しつつ下書きを行い、その上にペンキを塗っていきます。
八条さん「決まった字じゃないんですわ。ラブロマンスなら優しい字というか。細めの字がいいかなとか、荒い字にしようかなとか、その時その時、自分の感覚で。同じ字は一切ないですわ」
映画のイメージをかき立てる看板が完成しました。看板が飾られているのは通天閣の真下。昭和レトロな雰囲気を残す映画館です。70年以上も前に建てられました。
新世界国際劇場・冨岡支配人「八条さんが、看板描くじゃないですか、そういう雰囲気に劇場もなるんじゃないですかね。なじんできて、味があるって感じなんですよ」
八条さんは父親の後を継ぎ、25歳で映画看板の世界へ。ゼロから修行を積んでいきました。
八条さん「(最初は)まっすぐ線を引くとか、他の紙に練習して。大変でしたよ」
全盛期には10もの映画館から発注を受けていましたが、現在は1館のみ。
八条さん「映画館の小屋自体がなくなっていったし。需要がますます減っていって」
絶滅寸前の映画看板。しかし、その独特な雰囲気と世界観が、いま再びSNSなどで注目を集めています。
八条さん「見てくれる人が増えてるというか、風物詩みたいになってるかな。私が生きてる限りは頑張ってというところですわな。動く限りは体が」
【the SOCIAL lifeより】