「無人駅」降りたら絶景…SNS通じ世界へ
駅員のいないホームに降り立てば目の前に「絶景」。そんな無人駅がいま全国各地で話題となっている。山あいの秘境にある駅から海沿いの小さなホームまで。SNSを通じて、その魅力は世界へと発信されている。
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緑がまぶしい山あいを走るローカル列車・大井川鐵道井川線。沿線にある“無人駅”で出合える絶景がある。列車を降りるとすぐ目の前に広がるのは湖。湖の底から駅舎がある橋までの高さは70メートルと、まるで湖の上に浮かんでいるような「奥大井湖上駅」。ダムの建設に伴い誕生した無人駅。
毎年全国から多くの観光客が訪れているが、実は今年ある栄冠を手にした。
大井川鐵道・坂下肇所長「外国人が選ぶ観光地として選ばれました。静岡県では初めてということで」
世界中の外国人による審査で観光地などの魅力を発掘する「COOL JAPAN」。今年この「奥大井湖上駅」がインバウンド部門で受賞した。
美しい景色は万国共通、受賞をきっかけに外国人旅行者の訪問が増えているという。
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利用者の減少などを背景に年々増えていく傾向にある無人駅。時代にとり残されたイメージを持つ人もいるかもしれないが、日本には魅力ある無人駅が数多くある。
中でも再び脚光を浴びている無人駅が、愛媛・伊予市にある予讃線の無人駅「下灘駅」。
多くのドラマ、映画の舞台に選ばれ、鉄道ファンなどには既におなじみだが、今新たなファンを増やしている。そのきっかけが――。SNSを通じ、数多くの人がその魅力を紹介したこと。そして、この無人駅には、最も人々を魅了する時間があるという。
目の前にどこまでも広がる海を鮮やかに赤く染める夕日。その夕日が地平線へと徐々に沈み行く神秘的な姿に、時が過ぎるのを忘れてしまう。こうした“絶景”がSNSで世界へと拡散され、若い人や外国人旅行者も多く訪れるようになったという無人駅。
世代や国籍を超えたふれあいを通じ、地元の人も無人駅の持つ魅力に改めて気づかされたという。
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また、一風変わった景色で人気となる無人駅がある。富士山を眺むローカル列車「岳南線」。多くの人が目指すという無人駅が「比奈駅」。しかし、電車を降りてものどかな風景が広がるばかり。ところが電車に改めて乗るとその意味がわかった。
駅を出てすぐに目の前に広がる工場地帯。先には工場の中をくぐるスポットまである。貨物輸送を担っていたため、こうした構造になったが、トラック輸送が増え数年前に輸送をやめることに。ピンチを迎えたその時、追い風が吹いた。
それが、夜の工場を見学するいわゆる「工場萌え」ブーム。通常は工場を遠くから眺めるだけだが、この電車からはきらびやかな夜景をすぐ目の前で眺められると人気となり、ツアーを実施するまでに。多い日には100人以上乗車することもあるという。
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遠出が難しいという関東の人には穴場的な無人駅も。都心から1時間もかからず出合える絶景が神奈川・横浜市にある鶴見線の終点・「海芝浦駅」。圧巻なのが、夕日に照らされた景色。
実は身近にもある無人駅、この夏あなただけの心に刻む景色を探してみるのもいいかもしれない。