聴覚障害児の逸失利益「健常者と同様」大阪高裁
娘を事故で失った両親が、将来得られるはずだった収入が聴覚障害を理由に減額されるのは不当だと訴えた裁判の控訴審で、大阪高裁は20日、一審の85%に減額した判断を変更し、健常者と同じ100%で計算すべきとの判断を示しました。
2018年、大阪市生野区で井出安優香さんが聴覚支援学校からの下校途中、重機にはねられ死亡し、両親が運転手らに損害賠償を求めている裁判では、聴覚障害があった安優香さんの「将来得られたはずの収入」が争点になっています。
両親は、「全ての労働者の平均年収」と主張した一方、一審の大阪地裁は障害を理由に、「全労働者の85%の年収で計算すべき」と判断し、両親側が控訴していました。
20日の判決で、大阪高裁は「安優香さんは補聴器に加え、手話や文字を使用して学年相応の学力があり、将来、健聴者と同じ職場で同等に働くことが十分可能だった」と指摘し、一審判決を変更し、両親の訴え通り、「全労働者の平均賃金で計算するのが相当だ」と判断しました。
安優香さんの父親・井出努さん
「『奇跡が起きた』という実感」
安優香さんの母親・井出さつ美さん
「安優香の11年の努力、安優香の11年が認められたんだ」
弁護団によりますと、聴覚障害のある人の将来の年収を健常者と同じ額で計算すべきとの司法判断が示されるのは、全国で初めてだということです。