岐路に立つ「アンテナショップ」コロナ禍で閉店も… 生き残りかけ業態変化も
地方都市などが、その特産品を販売したりPRしたりするのが「アンテナショップ」です。東京では年々数を増やしてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に閉店が相次ぎ、曲がり角にきています。生き残りをかけた“変化”を取材しました。
◇
東京・有楽町にある鹿児島県のアンテナショップ。棚いっぱいに並んだ焼酎に黒豚を使った商品など、ご当地のものを購入できるのがアンテナショップの醍醐味(だいごみ)です。
福島県在住
「東京来るたびに、ここで焼酎買って送っているんですよ」
鹿児島県出身
「ふるさとの味そのものがここで買えるので。私は月2~3回は最低来るかな」
中には、次のような使い方をする人も――
埼玉県在住
「旅行が好きなんですけど、飛行機は制限があるじゃないですか、荷物の。それをメモしておいて、有楽町に来て(旅行先で見たものを)アンテナショップで買って、『行ってきたよ』で渡すことが結構多かった」
このアンテナショップは1995年にオープン。訪れた日はあいにくの天気にもかかわらず、朝からお客さんが来ていましたが――
鹿児島県東京事務所 上脇紀明次長
「コロナ前の平成30年度(2018年度)、これが一番直近では売り上げが多い年度ですが、その時と比較しても(昨年度は)入館者で39%減、売り上げが37%減少となっています」
コロナの影響で、訪れる人が減少。県は、賃料など年間約5000万円を支払いますが、アンテナショップの効果については次のように語りました。
鹿児島県東京事務所 上脇紀明次長
「(首都圏は)人口も多いですし、経済規模も大きい。首都圏の方々に直接、鹿児島県をPRできる効果が期待できる」
さまざまな自治体が、銀座や日本橋などの一等地に多く出店しているアンテナショップ。10年間で倍以上に増えています。一方、コロナの影響で入館者は大幅に減少。今年に入り、兵庫県や北海道美瑛町のアンテナショップなどが相次ぎ閉店しています。
◇
曲がり角を迎える中、店舗を見直す動きも出てきています。
表参道にある新潟県のお店は、来年末までに営業を終了します。建物の建て替えによるものですが、その後について、新潟県の花角知事は「リアルの店舗が必要かどうかも含めて、ゼロベースで考えてもらいたい」と有識者会議にゆだねています。
また、銀座にあった福井県のアンテナショップも今年2月に閉店しました。その理由とは――
福井県産業政策課企画主査 秦裕樹さん
「銀座と南青山、それぞれ立地の特性というものも違うので、そこはしっかりと機能を明確に分けた方がいいのではないかと」
実は、福井県には、銀座の他に南青山にもお店があります。ただ、どちらも特産品を販売するなど役割が重複していた部分があり、南青山の店舗を商談もできる企業向けの店として、銀座の店舗を特産品販売などの個人向けの店として機能を分担。それぞれ来年オープンする予定だということです。
◇
生き残りをかけ、変化を続けるアンテナショップ。
巣鴨には京都市のお店があります。その店内には、なぜか「大正大学」の文字がありました。実は、近くにある大正大学の学生が教育の一環として運営に携わっているお店なのです。大学生が関わることで、京都市側にもメリットがあるといいます。
京都市産業観光局・コンテンツ産業振興課 藤本清敏課長
「若い方向けの売り方だったり、情報発信などもありますので、若い人の中での波及効果も期待できるのかなと思っています」
さらにこれとは別に、京都市はインターネット上の仮想空間「メタバース」にも今年3月、情報発信拠点を設置。若い人に狙いを定めています。
◇
コロナを機に新たな道を模索するアンテナショップ。これからの“変化”に注目です。