ゆっくりしか走れない“グリスロ” 最高速度20キロ未満…各地で登場のワケ
あの人気の観光地に、新たな乗り物が登場しました。環境に優しい一方で最高速度は20キロ未満、「ゆっくり」としか走れないのですが、実はそれが大きな魅力となっています。
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栃木・東武日光駅。東京方面からの列車が到着すると、ホームには多くの観光客が。緑に囲まれた日光は、世界遺産にも登録された人気の観光地です。
そんな日光にお目見えしたのは「グリーンスローモビリティ」、通称「グリスロ」。電気で動き、走行時に二酸化炭素を出さない環境に優しい移動手段です。日光の社寺やその西側にある観光スポットを巡回するコースを運行し、ゆっくりと走るため、沿道の景色も楽しめます。
「グリスロ」が登場したワケ。そこには、世界遺産の街が抱える、ある悩みがありました。
日光は、点在する観光エリアを移動する観光客のマイカーで週末の交通渋滞が長年問題になっていました。環境面でも公共交通機関をより利用してもらいたい。そのため、魅力ある乗り物の導入が課題となっていたのです。
藤田大介アナウンサー
「いま、グリーンスローモビリティが走ってきました。こうした比較的広い道幅ではない場所でも、ゆっくりと走ることによって、圧迫感なく通ることができます」
乗車した人は、「(窓がないのは)斬新ですね。開放感があって、これからの夏とかは窓がなくて風が楽しめたり、写真も撮りやすかったです」と話します。
地元・日光で観光に携わる人たちも、おもてなしのチャンスととらえています。
『日光千姫物語』女将・根本方子さん
「自然を求めて来られるお客さまが多いので、電気バス(グリスロ)はとても良いと思います」
細い路地に店を構える店は──
『日光甚五郎煎餅本舗』石田雅一常務取締役
「(観光客は)どうしてもメインの東照宮さんの方に行ってしまいますので、こちら(グリスロ)をきっかけに見直されて、人でにぎわう通りになればうれしいです」
日光市は、「グリスロ」は、鉄道やバスなどとの連携がこれからは重要だといいます。
日光市観光交流推進係・副主幹 篠原義典さん
「持続可能な観光地づくりということで、東武鉄道さんなども中心になって環境配慮型のMaaSなども日光市内で取り組まれていますので、グリーンスローモビリティなど2次交通を整備することで、公共交通を利用して観光を楽しんでいただければ」
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一方、大都会で活躍する「グリスロ」も。
池袋では、「IKEBUS」の愛称で3年前に導入され、路線バスなどと共に大通りを走り、繁華街や公園などを結んでいます。「IKEBUS」の導入と反響について豊島区は──
豊島区都市整備部・交通基盤担当課長 小澤丈博さん
「池袋の町中はそれなりの移動距離はあるが、バスや電車で移動するほどではない。しっかりと(小回りの利く)移動機能をつけていきたいというところもあった。このモビリティを通して池袋の町を一つにすることが『IKEBUS』の狙いの一つです」
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観光と交通を専門とする東京大学の三重野真代特任准教授は──
三重野特任准教授
「グリスロが元々ある公共交通機関をさらに補完することができる。 これから免許を返納する高齢者の方、車で移動しない観光客にとって、良い移動ができるようになるのではないか」
一方で課題も。
三重野特任准教授
「車両に乗れる人数が少なく、便数も(速度が)遅いため、増えないことから、どうしても運賃収入に限界がある」
エコな乗り物として期待される「グリスロ」。地域で愛される乗り物になるかどうかが普及のカギとなりそうです。