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なぜ今、路面電車? いや今こそ路面電車

2022年5月19日 8:00
なぜ今、路面電車? いや今こそ路面電車
開業を静かに待つ次世代路面電車

戦前の日本では多く見られた路面電車。しかし戦後、マイカーの普及によって次々にその姿を消していった。

今、栃木県の宇都宮市や芳賀(はが)町では、次世代型路面電車「LRT」の工事が来年春の開業に向け進められている。

■環境に優しく次世代の都市交通としても注目、全線新設は国内初。

栃木県の鬼怒川を挟む宇都宮市と芳賀町の間で慢性的な渋滞が深刻となっている。LRTはその渋滞緩和に大きな期待が持たれている。

さらにLRTは環境にもやさしく、車いすでも利用しやすいよう床の低い車両を採用するなど、バリアフリーにも配慮している。次世代の都市交通としても注目されていて、全線新設という形での導入は全国でも初めてとなる。全長14.6キロの区間に19か所設置するバリアフリー対応の停留所や、マイカーやバスなどからの乗り換え拠点となる「トランジットセンター」などが少しずつ、その姿を現し始めた。

■レールや停留所、電車用の信号も姿を現し始めた。

起点となるJR宇都宮駅の東口ではLRTの開業にあわせ、交流拠点としての再開発が進んでいる。ホテルや商業施設、病院などが姿を現した。テラスやホールなどの建設も進んでいて、県民や観光客などが憩いの場所として利用できる。待ち合わせにも良さそうだ。

LRT用の信号機もあちこちに立ち始める一方、架線用の支柱が設置されていない区間もまだまだ多い印象だ。急ピッチの工事が求められる。

■基地内の車両も就航に向け準備中。

LRT車両基地内の様子も取材した。最初の車両が搬送されて1年がたった現在、施設内にはすでに12編成の車両が開業の日を待っている。新潟にある車両メーカーでは残りの車両もほぼ完成しているということで、年内には17編成すべてが出揃うという。

この日は実際に車両を動かしてくれた。時速10キロ程度の低速運転ではあったが、その大きな車窓に景色が流れると、否応(いやおう)なしに興奮してしまう。これが車両基地内ではなく、のどかな景色の中だったなら…。

■宇都宮市や芳賀町は「LRTが走る街」へのスタートを目指す。

市では現在、開業後の信号機など新しい交通ルールの周知も進めている。ドライバーにとっては新しい信号や交通ルールに少なからず不安を感じるだろう。

市の担当者に聞いてみた。

「ドライバーさんはこれまで通りの信号に従って」「車両の窓は大きく運転士が見えるので、お互い目配せしながら通行して」

LRTが走っていても、電車用の信号機があっても、我々ドライバーは今まで通りの交通ルールに従えばいいとのことだった。

LRTの新しいポスターも完成した。「休日のおでかけ編」や「通勤・通学編」などの3種類で、実際の車両や停留所で撮影したそうだ。「LRTのある暮らし」に現実味を感じる仕上がりとなっている。

宇都宮市のエリアでは「道路工事」の印象が色濃いが、芳賀町エリアでは「ここを路面電車が走るんだな」というイメージを持つことができる。

来年の春には、開業を楽しみにしている娘を連れてLRTの大きな車窓からのどかな風景が楽しめることを心待ちにしている。