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障害者雇用 水増しなくなるか?

2019年8月21日 17:09
障害者雇用 水増しなくなるか?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「障害者雇用 水増しなくなるか?」。Silent Voice代表の尾中友哉氏に話を聞いた。

中央省庁の障害者雇用水増し問題を受けて、行政機関への厚生労働省の監督機能強化を柱とする改正障害者雇用促進法が今年6月に成立した。

改正法は公的機関に対し、障害の確認に使った障害者手帳の写しの保存を義務付けた上で、厚労省に点検や勧告を行う権限も付与した。

ネット上では…

本当に水増しがなくなるのか?
雇用してからの仕事内容が大事
障害者雇用は数値目標にすることではないと思う

などの意見があった。


――この話題について尾中さんにフリップをかいていただきました。

(丸、四角、矢印が描かれたフリップを出す)
私は、図で描きました。丸や四角は人を表していて、人の関係性ですね。「丸から四角」というものから「丸から四角、そして四角から丸」に変えていくのが大切だと思います。

自分は「オギャー」と生まれてきたわけですが、自分の産声というのは両親には聞こえていなかったわけで(両親は聴覚障害者のため)それは一般的に障害者といわれるんですね。

私は健常者です。だから両親ができないこと、例えば電話をとるということができないんで、私は6歳くらいから両親の電話に出るということをやってきました。そうすると、できないいわゆる障害者の両親、できるいわゆる健常者の私が助けるという、この考え方ばかりが多いと思うんですね。

しかし、私にもできないことがあって、それを両親が助けてくれたから僕が育ったと思うんですね。人間はそもそも「助けることもあれば、助けられることもある」、そういう関係性に持ち込めるか。でも、障害者が入ってきたら、お客様扱いしてみたり、難民を支援するみたいな気持ちで一方的にやっているケースが多いと思います。

障害者理解という言葉がよくいわれるのですが、本当は会社の仲間というのであれば、相互理解が大事で、障害者に合理的配慮をやっていこうというよりはお互いの歩み寄りが重要で、そういう関係性をしっかり職場の中につくれるかが大切だと思います。


――さらに進んで歩み寄りを持たせるためには何が重要なんでしょうか。

いま障害者雇用であったり「障害者」ということでいっていますけど、「障害者」という障害者というのは実はいないんですね。

障害者というのはグループ名のことです。聞こえない人もいるし、見えない人もいるし、歩けない人もいる。これはできること、できないこと、ニーズは全然違うわけです。

それを個別に見ていって、その聴覚障害のなかでもいわゆる健常者と同じように、この人はこれが得意ということもあるんですね。そこをしっかり見つけ出していく対話の機会がつくれるかが大切だと思います。この人は障害者だから何かができないということよりも、何かできることを見つけようというその切り替えが必要だと思います。


――これは本当に誰においても同じ事かもしれませんね。

同じ事です。そうです、そうです。


■尾中友哉氏プロフィル
尾中氏は、聴覚障害者が講師を務める「無言語コミュニケーション研修」や、聴覚障害者が働きやすい環境をつくるためのコンサルティングを提供する会社を経営している。また、聴覚障害、難聴児のための手話で学べるオンライン家庭教師システムや、総合学習塾のNPO法人も運営している。尾中氏は、聴覚障害者の両親の元、手話を第一言語として育った。大学卒業後、広告代理店で働く中、「自分にしかできない仕事とは?」と考え続け、2014年に現在の事業をスタート。聴覚障害者の強みを生かす社会を実現しようと活動している。

【the SOCIAL opinionsより】