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ナゼ?“開かずの踏切”廃止に反対の声も…

2019年8月23日 18:56
ナゼ?“開かずの踏切”廃止に反対の声も…

都心の大動脈「山手線」に唯一、残されていた踏切。いわゆる“開かずの踏切”のため、なくす方向で協議されている。開かずの踏切は、ムリな横断や死亡事故につながるケースもあり、国も廃止を呼びかけている。ところが、住民から反対する声も上がっている。ナゼなのか、実態を取材した。

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山手線の駒込駅から歩いて5分。一見どこにでもありそうな踏切が、東京都心の大動脈「山手線」に残された唯一の踏切。しかし、実は“開かずの踏切”でもある。

事故や渋滞を防ぐため、いま、各地の踏切は徐々に廃止されている。山手線で最後の踏切も、なくす方向で協議されている。

「山手線唯一の踏切」について、ネットでは「まさか唯一だとは思ってなかった」「時代の流れですね」「山手線ならほとんど開かないだろうな」といった声が上がっている。

開かずの踏切をなくす動き。しかし、中には廃止が難しいケースもあるという。

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ラッシュ時にはわずか2分半間隔でせわしなく走るJR山手線。その山手線に残る唯一の踏切は、駒込駅と田端駅の間にある「第二中里踏切」。

朝のラッシュ時には、困ったことも起きている。

電車が通過すると、踏切が開くが、遮断機が上がりきる前に早くも警報機が鳴り始める。この日は、1時間のうち、およそ42分間も遮断機が下りていた。

今年6月、踏切がある北区は、踏切を廃止し、エレベーター付きの歩道橋を設置する計画を区議会に報告。今後、地元の住民への説明をへて、来年度末までに改良計画を国に提出する方針。

国も、開かずの踏切廃止に動いている。2016年に法律を改正し、開かずの踏切や事故の危険がある全国1000か所の踏切について、来年度までに改良するか、少なくとも計画案の提出を義務づけている。

ただ、改良を終えたのはおよそ3割。計画案提出と合わせても6割ほどにとどまっている。

そこにはある背景があった。

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訪れたのは、横浜市鶴見区にある「生見尾(うみお)踏切」。京浜東北線など、JR3路線が走る“開かずの踏切”。長さがおよそ40メートルもある。2013年には、開いている間に踏切をわたりきれなかった88歳の男性が、電車にひかれ亡くなる事故が発生。

それを受け、横浜市は、安全のため踏切を廃止しエレベーター付きの歩道橋を設置しようとしている。

しかし、なくなると不便と反対する声も多い。

生麦駅前通り商友会・加藤二紀会長「(踏切廃止は)安全面では確かにそうですけど、行き来するということが不便になると思うんですよね」

近所の住民「唯一この辺で車が通れるのはここの踏切なんですね」

実は、この踏切がなくなると、車で反対側に行きたい場合、およそ700メートルの“回り道”が必要になる。こうしたこともあり、工事はまだ始められず、横浜市は今後も、廃止する方向で住民と話し合いたいとしている。

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開かずの踏切の廃止が進みにくい事情について、専門家は…。

鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん「究極の解決策は立体交差なんですけど、(工事が)終わるまでに10年単位ですし、費用も1か所の踏切をなくすのに大体、50億円くらい。結局、いま行われている策以外に、良い方法がなかなか見当たらない」

事故を防止したい行政側と生活が変化することへの不安を感じる住民側。“開かずの踏切”の問題解消は、簡単ではなさそうだ。