口腔底がんの夫に作った“希望のトンカツ”
がんにかかり、口の中の大部分を切除した男性がいる。食事をとるのが困難になった男性のために、料理研究家の妻が開発したのが、簡単に食べられる「やわらかトンカツ」。妻が作る料理には別のこだわりも。
料理研究家のクリコさん、2011年、夫のアキオさんが口腔底がんになった。口の中の大部分を切除し、残ったのは奥歯が1本。味覚はあるものの、下あごの麻痺でおかゆを食べるのでさえ困難になった。好物を食べさせてあげたい。退院後、その思いから生まれた献立のひとつが、柔らかいトンカツだ。
豚ひき肉に豆腐やお麩(ふ)などを混ぜ、形を整えたクリコさん特製のシート肉。衣を付け、通常の油で揚げる。上あごと舌で潰すことができ、喜んでくれたアキオさん。クリコさんのこだわりは、見た目から食欲が湧くもの、家族で同じ献立を食べることだった。
クリコさん「疎外感を与えたくなかったっていうのが一番なんですね。同じ食事を2人で楽しみながら食事をしていたのが、病気になった後に全然違うものを食べて、その楽しさを共有できないというのは私にとっても寂しいことだった」
退院から約10か月後、2012年11月、がんの再発でアキオさんはこの世を去った。
クリコさんは現在、家庭で作れる介護食の作り方を広めている。
クリコさん「介護食って特別な何か技術が必要なわけではなくて、家庭料理の延長線上にあるもので、新しい形の家庭料理っていう捉え方で楽しんでいただけたらなって」
【the SOCIAL lifeより】