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「高額療養費」見直しで……厚労省“受診控え”を想定 子どもがいるがん患者の4割「治療を中断」 月5万円以上の負担増も

2025年2月13日 10:09
「高額療養費」見直しで……厚労省“受診控え”を想定 子どもがいるがん患者の4割「治療を中断」 月5万円以上の負担増も

命に関わる高額療養費制度の見直しを巡り、患者団体が12日、大臣に一旦凍結を求めました。自己負担額の上限が引き上げられ、受診控えを招くと懸念されています。政府は保険料負担の軽減などを目的としていますが、財源は他に見出せないのでしょうか。

■患者団体、厚労大臣に「凍結」直訴

小栗泉・日本テレビ解説委員長
「焦点となっている高額療養費制度。がんなどの病気の治療や手術などで医療費が高額になった場合、患者の自己負担額に上限を設ける制度で、いわゆるセーフティーネットの役割を果たしています」

「政府は今年8月から自己負担の上限を引き上げる見直しを既に決定しています。これに対して患者団体が2月12日、福岡厚生労働相に直接、見直しの一旦凍結などを求めました」

■年収650万円なら月額負担8万円

小栗委員長
「そもそも今、医療費が高額になった際にどのくらい負担するのかは、年齢と収入によって分かれています。例えば30代のAさんが、がん治療が必要になったとします。Aさんの年収は約650万円で、医療費が月に100万円ほどかかりました」

「ただこの制度を利用することでAさん自身の負担は月8万100円程度になるというものです」

藤井キャスター
「私たちの親世代だけではなく、若い人も利用する可能性がある制度だと理解しています」

かしゆか(Perfume・『news zero』水曜パートナー)
「そもそもなぜ、引き上げる必要があるのかが気になりました」

小栗委員長
「高齢化や高額な薬の普及などにより、高額療養費の給付総額が2019年度からの4年間で600億円以上増加しています」

「これが働く現役世代の保険料の増加につながっていて、政府は現役世代の負担軽減と少子化対策の財源確保を目的として、年収に合わせた月の上限額の引き上げを行う方針です」

「引き上げた場合、どうなるのか。Aさんは自己負担額が月8万8200円程度になり、約8100円引き上げられることになります。この引き上げは段階的に行われ、2年後の2027年8月には月13万8600円程度と、今と比べると約5万8500円も増えることになります」

藤井キャスター
「月にこれだけの負担ということは、長い療養期間が必要なら、毎月この金額がかかっていくということになるのですね」

■保険料負担、どれだけ軽くなる?

小栗委員長
「そうです。これだけ上限額を見直して、働く世代の保険料の負担がどのくらい軽くなるのか。中小企業の会社員で、1人あたり年間3500円程度と試算されています。そのため患者団体はこの見直しに反発していて、厚労相への直訴となったわけです」

「患者団体は、自己負担額の引き上げによって受診控えが起きると懸念していて、子どもがいるがん患者の4割が『治療を中断』、6割が『治療回数を減らす』と回答しているとして、引き上げの一旦凍結などを求めました」

「厚労省は今回の見直しで5330億円の税や保険料を減らすことができるとしていますが、そのうち2270億円は受診をやめる受診控えが起きると想定した数字です」

■立憲、凍結求める法案提出か…今後は

藤井キャスター
「受診控えを想定した数字というのは非常に複雑ではありますが、この先どうなっていくのでしょうか」

小栗委員長
「国会では、立憲民主党がこの見直しの1年間の凍結を求める法案を出す構えですが、自民・公明の与党は働く世代の保険料負担を減らすためにも、見直しの全面的な凍結ではなく、長期的な治療が必要な人について負担を軽くする修正で決着したい考えです」

「今回、当事者である患者などへの実態調査をせずに見直しを決めたということです。命に関わることですから、財源を他に見出せないのかということも含めて、徹底して知恵を絞り、多くの人がこれならばと納得できる道を見つける必要があると思います」

かしゆか
「財源を見出すのが本当にここでないといけないのか、と思ってしまいますね。もう少し検討を重ねて他にないのか考えてほしい思いがあります」

「私は家族や身近な人に制度を利用している人はいないのですが、いつ利用することになるのか、誰にもわからないですよね。だからこそ実際に制度を利用している人の声を聞いて、話し合いながら決めていっていただけたらいいなと思いました」

(2月12日『news zero』より)

最終更新日:2025年2月13日 10:09