「水際対策」一部緩和へ“訪日観光客”増えるか? 待ちきれず“日本人向け”に業態変更も… 「全数把握」も見直しへ
岸田首相は24日、新型コロナウイルスの水際対策を一部緩和することなどを発表しました。歓迎の声があがる一方、外国人観光客を“待ちきれず”、業態を変化させたところも出てきています。
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東京・羽田空港でフィンランドから帰国した男性に話を聞きました。日本に来るのは、約1年ぶりだといいます。
フィンランドから帰国した学生(20代)
「8か月間の留学と、4か月間のインターンシップをしていました」
楽しみにしていた彼女との再会。ただ帰国の際、気がかりだったのが――
フィンランドから帰国した学生(20代)
「PCR検査の陰性証明が必要だったので、フィンランドで病院を探して受検しました」
現在、日本へ入国する時には、「72時間以内の新型コロナ検査の陰性証明書」を提示しなければなりません。この陰性証明について、岸田首相は24日、来月7日から新型コロナウイルスのワクチン3回接種を条件に免除すると発表しました。
仕事でベトナムに行く会社員(40代)
「検査結果が出るまで、非常にドキドキする思いは毎度していますね。気持ちとしてはありがたいですけど」
入国前検査の免除を歓迎する声がある一方で、免除となっても自主的に検査を受けるという人もいました。
アメリカの大学に戻る学生(20代)
「気持ちとしてはありがたいですけど(入国時の)陰性証明はあったほうがいいんじゃないかと個人的には思います」
水際対策の緩和で、外国人観光客が増えることも期待されています。現在、観光目的の個人旅行が解禁されていないこともあり、コロナ前の水準には遠く及んでいません。
訪日外国人客(日本政府観光局調べ)
2019年 約3188万人
2020年 約412万人
2021年 約25万人
2022年(~5月) 約39万人
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こうした中、外国人観光客をターゲットにした宿泊施設は、オープンからわずか4年で大きな決断をしました。先月、大幅なリニューアルを行った東京・浅草にある「サウナランド浅草」です。
サウナランド浅草 小曽根葵マネージャー
「元々インバウンド向けだった宿泊施設をリニューアルして、サウナを併設したサウナホテルとして」
元々、お客さんの9割が外国人観光客だったといいますが、コロナで激減。サウナブームを背景に、日本人にも来てもらえるよう、サウナ付きの部屋に泊まれるプランを始めたといいます。
コロナを機に行った、ターゲットにする客層の変更。以前は、客の半分ほどが外国人だったという、東京・浅草にあるレンタル着物店「浅草 着物レンタル大吉」でも――
浅草着物レンタル大吉 大友雄介店長
「(外国人は)梅とか桜とか、和風なお花を好まれる傾向にはあると思います」
外国人が好む色や柄よりも、日本人に人気のデザインを多めに用意。英語の看板も撤去したということです。
東京・銀座にある百貨店「松屋銀座」は、“顔”ともいえる入り口付近の売り場を20年ぶりにリニューアルしました。
松屋銀座バイヤー 三原薫子さん
「コロナの中で一つプラスに転じたことが、20代、30代の新しいお客様が百貨店に増えている」
「松屋銀座」では、今まで外国人観光客や日本の40代から50代が売り上げの大半をしめていましたが、外国人客が減ったこともあり、20代から30代に人気の化粧品ブランドなどを多く取りそろえ、新たな客層を狙いたいとしています。
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水際対策以外に24日、岸田首相が表明したのが、すべての感染者の届け出を義務付けている「全数把握」の見直しです。
「全数把握」のための届け出は、医療機関の負担となっています。そのための作業について、発熱外来の医師は――
東京ビジネスクリニック 内藤祥医師
「150人~200人くらいは一日、陽性者が出ています。(入力作業などでかかるのは)おそらく1人あたり10分~15分」
岸田首相は今後、高齢者や重症化リスクが高い感染者に絞って報告を求めることを明らかにしました。全国一律ではなく、各自治体の判断で実施するということです。
東京ビジネスクリニック 内藤祥医師
「私どものところで陽性になる方が100人いたとして、リスクがあって報告が必要な方というのは、多分5人程度。発生届の分量としては、95%削減されるとは思います」
その一方で、東京ビジネスクリニックの内藤医師は、重症化リスクがあるにもかかわらず登録漏れしてしまうなど、患者が不利益をこうむらないよう注意していきたいとしています。