フェンスの下に…ブロック塀の“倒壊リスク”──宮城県沖地震では仙台市の死者の約7割が犠牲に…【武居信介の防災学】
6月12日に埼玉県越谷市で民家のフェンスが倒れ、小学生が重傷を負いました。倒れたフェンスの土台となっていたのは、ブロック塀。実は、ブロック塀の倒壊は、地震の際にたびたび命に関わる事故の原因となっているのです。
■埼玉県でフェンスがブロック塀ごと倒れて男児が重傷に…46年前から明らかなブロック塀の“倒壊リスク”
6月12日の夕方、埼玉県越谷市の民家でフェンスが倒れ、子どもが挟まって重傷を負う事故がありました。高さ約1メートルのフェンスが、土台となっていたコンクリート製のブロック塀ごと、幅約14メートルにわたり倒れたということです。
ブロック塀の倒壊リスクが注目されるようになったのは、越谷市の事故からちょうど46年前。1978年6月12日に発生した宮城県沖地震で、ブロック塀があちこちで倒壊し、道路を通行中の人たちが下敷きになるなどしました。仙台市によると、仙台市内の死者16人のうち11人もがブロック塀の倒壊によって死亡しました。
この地震をきっかけに、国はブロック塀の高さの規制を強化。建設可能なブロック塀の高さを、3メートルから2.2メートルまで引き下げました。
そして、ブロック塀の倒壊対策を大きく進めたのが、2018年に発生した大阪北部地震です。ちょうど通勤・通学途中の午前8時ごろに発生した地震で、大阪府高槻市では小学校のプール沿いのブロック塀が倒れ、登校途中の小学生が下敷きになって死亡しました。
その後、高槻市の事故調査委員会は、ブロック塀に国の規定に反する施工が認められたと報告しました。ブロック塀はもろい構造物の上に設置されており、その構造物とブロック塀を接続する鉄筋の長さも不十分。その上、鉄筋が腐食しているなど、倒壊しやすい状態になっていたということです。
さらに、危険なブロック塀が多く存在するのは「全国的に共通する問題」だとして、速やかに撤去を進めるための地方への財政支援を国に要望すべきとしました。
■あなたの身の回りにも?ブロック塀を点検して倒壊リスクに備えよう
大阪北部地震など各地で発生したブロック塀の倒壊事故を受けて、国交省や各自治体は倒壊防止に乗り出しました。危険なブロック塀の撤去や耐震化、安全な植栽への置き換えなどに助成金を支給する自治体が広がっています。助成の内容は自治体ごとに異なるので、調べてみる必要があります。
ブロック塀の倒壊対策のポイントとして、国交省は6つのポイントを示しています。
基準に適合した大きさになっているのか、ブロックの中に鉄筋が入っているのか、倒壊を防ぐ「控え壁」が設置されているのか、しっかりと基礎ができているのかが重要なポイントとなります。
そして、ひび割れなど一部が破損している場合や、壁が傾いている場合はすぐに対策を取る必要があるとしています。
地震時にブロック塀が倒壊すると、通行人に重大な被害を与えるだけでなく、道を塞いでしまい、避難や救助活動にも支障が出ることがあります。そして、ブロック塀の倒壊事故が発生すると、所有者の責任が大きく問われることになります。家屋だけでなく、ブロック塀の耐震化や日頃からの管理も重要なのです。
【筆者プロフィル】
元中京テレビ報道局担当局次長。気象予報士であり、国土交通大臣委嘱「気象防災アドバイザー」として活動も行う。現・名古屋大学減災連携研究センター研究員。