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「あおり運転罪」新設されるとどう変わる?

2019年12月30日 4:34
「あおり運転罪」新設されるとどう変わる?

悪質な「あおり運転」が社会問題となる中、2019年12月、警察庁が、いわゆる「あおり運転罪」の新設を検討していることが明らかになった。「免許取り消し」や「懲役刑」など具体的な処分や罰則が検討されているが、新設される「あおり運転罪」では、どのような行為が取り締まりの対象になるのだろうか。

■取り締まりの現状と厳罰化の背景

「あおり運転」が社会問題化するきっかけとなったのは、2017年6月に起きた「東名高速あおり運転死傷事故」だ。夫婦2人が死亡するなどしたこの事故を受け、警察庁は2018年1月、あおり運転に対しては厳正な捜査を徹底するよう全国の警察に指示を出した。

ただ、現在の道路交通法には、何が「あおり運転」に当たるのか定義する条文が存在しないため、実際の現場では、道路交通法違反のほか、刑法の暴行罪や強要罪など既存の法律を当てはめながら取り締まりが行われているのが現状だ。

実際には道路交通法の車間距離を不必要に詰める「車間距離保持義務違反」が適用されるケースが多く、高速道路で普通車の場合、違反点数は2点で、反則金9000円を支払えば刑事責任を問われることはない。

こうした中、2019年8月には常磐道で、いわゆる「あおり運転殴打事件」が起き、悪質な「あおり運転」には厳しい刑事罰を科すなど新たな法整備を求める声が高まっていた。

実際、2019年10月に警察庁が全国のドライバー約2500人を対象に実施したアンケートでも、「あおり運転」を抑止するために必要な方策について、「罰則の強化」と答えた人が全体の74.6%と最も多かった。また、全体の約35%の人が過去1年間に「あおり運転」の被害を経験していることも明らかになった。

■法律が定義する「あおり運転」とは?

こうした現状を踏まえ警察庁は、2019年12月、新たに「あおり運転罪」の創設と罰則などの強化に向けて法改正を進める方針を明らかにした。現在、検討されている改正案では、相手の通行を妨害する目的で「一定の違反」を行い、交通の危険を生じさせるおそれのある行為を「あおり運転」と定義した。

「一定の違反」には、車間距離を詰める行為や無理な進路変更などが想定されていて、罰則は懲役2年から3年以上とした上で、免許取り消しの対象とする案が検討されている。

また、これらの行為に加え、高速道路上で相手の自動車を停止させるなど、事故の危険性が高い行為をした場合には、より重い罰則を科す方針だ。

ただ、新たな「あおり運転罪」を適用するには、通行の妨害を目的とした意図的な違反、という要件を満たすことが必要になるため、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像などから執ように違反行為を繰り返したことを立証できるかがポイントになってくるとみられる。

警察庁は、2020年の通常国会に「あおり運転罪」の新設などを盛り込んだ道路交通法の改正案の提出を目指している。