「悪質なあおり運転、どう処罰する?」
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を伺う「オピニオンズ」。今日のテーマは、「悪質なあおり運転、どう処罰する?」。「あおり運転罪」の声もあがる中、弁護士の大達一賢氏に意見を聞いた
危険なあおり運転が、問題になっている。8月には、茨城県の常磐自動車道であおり運転の末、男性を殴りケガをさせた事件が、また、先月は愛知県の東名高速道路でエアガンを発射し執拗にあおり運転をした事件など悪質な「あおり運転」が相次いでいる。
一方、自民党は、あおり運転をより適正に処罰するための法整備を検討している。
ネットでは「あおり運転の定義を明確にする必要がある」
「あおり運転は、一生免許停止にすれば」
「どれだけ厳罰化しても、やるヤツは、やるんだよね」
といった声が出ている。
―――「あおり運転罪」をつくるべきとの声もあがっていますが、大達氏のご意見は?
私の意見は「あおり運転罪 本当に必要なの?」です。あおり運転の事件が頻発して、すっかりメジャーな言葉になりましたが、私はこのあおり運転というものは交通の安全の観点から、到底許されるものではないと思っています。
それは前提としてあるんですけれども、ただし、あおり運転というものは、既存の法律でその相当部分が処罰される可能性が十分あるものなので、新たにあおり運転罪というものを創設することには慎重にならなければいけないと思っています。
―――具体的にはどんな法律で取り締まれますか?
あおり運転の典型例として挙げられるものとして、例えば前を走っている車に急に距離を詰めてあおる行為であれば、道路交通法上の車間距離保持義務違反に該当するものとして、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金と定められています。
他にも、走っている車の前に出て急ブレーキをかけるということは、急ブレーキ禁止違反に該当して先ほどと同じような罪に該当します。それ以外にも蛇行運転をすれば進路変更禁止違反というものになって、同じように道路交通法違反になります。
それ以外にも、当然あおり運転をする際にスピード違反があれば速度違反として処罰されますし、あと自動車を降りて車を蹴ったりして壊してしまえば、器物損壊罪。運転手の方を殴れば暴行罪や傷害罪など既存のあおり運転と呼ばれているものに関しては、その相当部分が既存の法律でカバーされているものと考えています。
―――そこまで詳しくいろんな法律があるのであれば、新しく作る必要ってあるのかなと思ってしまいますよね?
ですから私はやはりあおり運転罪というものの創設には慎重になるべきだと考えております。刑罰というものは国家が国民に対して人権制限を課す最たる場面だといえると思うんですね。日本という国は自由主義国家なわけですから、刑罰というのは基本的に抑制的でないといけないとは思っています。
運転者からしてみれば、自分の運転があおり運転に該当するのかな、どうなのかなと思いながら運転をすると萎縮してしまうという効果が出てきてしまうので、既存の法律の運用を変更するとか、そういったことで十分対応が可能なのではないかというのが私の意見です。
―――今ある法律で、ちょっと厳しくするとか、そういったことで防げるといいですよね。
大達氏:
そうですね。それにはやはり、既存の裁判での刑罰が実際にどのように適用されるであるとか、そういった現実の運用を変更することでも十分対応可能なのではないかと思っております。
【the SOCIAL opinionsより】