ミニシアターブームをけん引「岩波ホール」終幕へ “46年営業”高田馬場の「立ち食いそば店」も…
ミニシアターのブームを半世紀以上けん引してきた「岩波ホール」が、まもなく終幕を迎えます。また、東京・高田馬場駅前で40年以上営業を続けてきた立ち食いそば店も閉店を決め、常連客たちが思い出の一杯を懐かしんでいました。
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また、ひとつミニシアターの“灯り”が消えていきます。
「岩波ホール」を訪れた人
「とても残念だなって。こういう映画館、残していてほしいなって思いますね」
1968年、東京・神田の神保町に誕生した「岩波ホール」は、世界66か国、274本の名画を上映するなど“ミニシアターブーム”をけん引してきました。今や当たり前となった「各回完全入れ替え制」を初めて導入したのも「岩波ホール」でした。しかし、この名シアターもまた、コロナ禍での経営悪化を理由に、54年の歴史に幕を下ろすことになったのです。(7月29日まで)。
ファン歴30年(静岡から)
「東京来た時は、必ずここへ来ていたんですけど。本当に長い間、ありがとうございました」
“ありがとう”は広がりを見せ、同じ千代田区にある図書館では、「岩波ホール」の歴史を紹介する特別展示を23日まで開催。長年、映画文化を支えてきたスタッフの思いに触れることができます。別れを惜しむだけではなく――
千代田図書館・企画担当 広木春香さん
「岩波ホールさんが作ってきてくださった文化を、どういうふうに継続させていくべきなのか、未来につなげていくべきなのか、発信するのが大事だと思って」
「岩波ホール」が残した文化は、未来へ受け継がれていくはずです。
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東京・高田馬場でサラリーマンや学生の胃袋を満たしてきた「立ち食いそば」の名店もまた、周辺の都市開発を理由に長い歴史に幕を下ろします。
吉田屋そば店 草野彩華さん(73)
「お店が終わるから、しょうがないね」
草野さんの父親が経営していたすし店との“二毛作”として、1976年にオープンした「吉田屋そば店」。多くの人に愛されてきた理由がありました。
――一番のお気に入りは
客
「天ぷら蕎麦」
濃い目のつゆに、ボリューム満点のかき揚げがのった「天玉そば」(520円)。安くても一切、妥協しない味と、まるで“実家の母ちゃん”の「名物おかみ」の気さくな人柄です。
吉田屋そば店 草野彩華さん(73)
「閉まるっていうから慌てて来たの? まあいいお客様だこと」
閉店を知り、10年ぶりに駆け付けた人がいました。
10年ぶりに駆け付けた客
「高田馬場を営業で回っていて、その時、食べられなくて、仕事が稼げなくて。その時に僕そば好きだったので、立ち食いでクイックで、『まだ、がんばろう』と」
そして、高田馬場という土地柄、早稲田大学のOBで30年通い続けた人もいました。
早稲田大学のOB
「ここがないのが想像つかないです」
吉田屋そば店 草野彩華さん(73)
「そうかい、だめだよ。現実なんだから」
早稲田大学のOB
「元気でいてくださいね」
「ごちそうさまでした」
吉田屋そば店 草野彩華さん(73)
「毎度」
早稲田大学のOB
「お元気で」
吉田屋そば店 草野彩華さん(73)
「また来て」
“庶民の味”を提供する立ち食いそばだからこそのたくさんの出会いがありました。
吉田屋そば店 草野彩華さん(73)
「立ち食いそば屋って安いしすぐできるし、気楽に食べられるでしょ。こういう食べ物って大事だと思う。長らくご愛用いただきまして、私はとても幸せです」
閉店まであと1週間、感謝の思いを胸におかみはそばを作り続けます。