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【解説】危険生物“襲来” 凶暴なアライグマ目撃も… 専門家「人間がなめられている」

2022年8月19日 18:54
【解説】危険生物“襲来” 凶暴なアライグマ目撃も… 専門家「人間がなめられている」

年々、生息範囲が拡大し、私たちの生活圏に忍び寄っている危険生物。なぜ今増えていて、危険を避けるにはどうしたらいいのでしょうか。

「危険なハチ、全国に拡大?」
「東京23区にアライグマ」
「夏に活発マダニ注意」

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■危険な外来生物「ツマアカスズメバチ」 もし刺されたら…

19日、九州大学は、特定外来生物の「ツマアカスズメバチ」が福岡県内で50匹以上確認されたと発表しました。今年4月から8月にかけ、立て続けに見つかっていて、巣も確認されているといいます。

九州大学 上野高敏准教授
「そんなにいるのだっていうぐらいの数、2桁を大きく上回る数見つかっています。(巣は)確実に2個は絶対存在する」

ツマアカスズメバチとは、一体どのようなハチなのでしょうか。もともと、中国や東南アジアなどに生息していて、体長は2cmほどです。全体的に黒っぽく、おなかはオレンジ色。足先は黄色などの特徴があります。ミツバチなど昆虫類をエサにしているため、生態系への影響が大きいことが懸念されています。

ツマアカスズメバチは2012年、長崎・対馬市で初確認されました。九州大学によると、今年4月に福岡市で、5月には隣の久山町で女王バチが発見されたということです。8月に入ってからは、久山町と篠栗町で働きバチが相次いで発見され、あわせて50匹以上発見されたといいます。

上野准教授は「今は定着の初期段階のため、まだ数は少ないものの、今、巣を発見して、徹底的に駆除しなければ、来年以降に定着してしまって、九州全域、さらには国内の人の流れや物流に乗って、全国に拡大される可能性もある」と指摘しています。

国立環境研究所の五箇公一氏によると、スズメバチ以上に都市部でも十分適応できるのがツマアカスズメバチの特徴の1つです。例えば、ビルの壁や電柱などに巣を作ることができるそうです。すでにフランス、ドイツなどでは街中で増えていて、実際に人が刺された被害が報告されているということです。

さらに、8月から9月にかけて、巣を大きくして、新しい女王バチを育てる時期にあたるため、巣を守ろうとナーバスになり、攻撃性が増しているということで、より注意が必要です。もし、刺された場合、体質によっては「アナフィラキシーショック」を起こす可能性があるということです。刺された場合は、すぐに医療機関を受診することが大切になってきます。

■凶暴な一面も「アライグマ」都内で目撃 専門家「人間がなめられている」

そして、最近、私たちの身近な場所でよく目撃されているのがアライグマです。18日に放送されたnews every.でもお伝えしましたが、東京・世田谷区の住宅街で7月に撮影されたという映像では、アライグマが塀をよじ登って歩く姿が捉えられていました。ここ数年、東京23区内でアライグマの捕獲数が急増しているのです。

アライグマは北アメリカが原産で、しま模様のしっぽが特徴です。かわいらしい見た目をしていますが、人や家屋を攻撃するなど、凶暴な一面も持ち合わせている危険な生物です。エサとなるのは魚や鳥、昆虫、野菜、穀類など幅広く食べるため、生態系や農業に影響を及ぼすとして、「特定外来生物」に指定されているのです。

国立環境研究所の五箇公一さんによると、昔は動物が山から下りてくると、人は食料として狩ったり、駆除したり、人と獣の間に適度な緊張関係があり、動物側も警戒心があったということです。今は、動物を狩る人もめっきり減り、生ゴミや畑などがエサになるため、都市部はもはや動物にとってすみやすい環境になっているということです。「ある意味、人間が動物になめられてる側面もある」と指摘していました。

もし、アライグマに遭遇した場合、近づかず、すぐに自治体に連絡して、駆除を依頼してほしいということです。

■危険な生物「マダニ」 生活圏の近くに潜んでいるケースも…

そして、今の季節にこそ注意が必要な危険生物もいます。それは、マダニです。

種類にもよりますが、マダニの体長は3ミリ~8ミリほどで、家の中のダニよりかなり大きく、肉眼で見ることができるほどです。春先ごろから幼虫が出て、夏の時期に特に遭遇する機会が多いということです。マダニにかまれると、最悪の場合は死に至る感染症を引き起こすこともあり、注意が必要なのです。

マダニの主な生息地は日本全国の山林、やぶの中です。そもそも動物の血を吸うため、寄生して生きています。

したがって、アライグマやシカ、イノシシなどが山の奥から都市部に下りてくる際に、マダニを一緒に連れてきてしまいます。その結果、都内の緑地や住宅エリアなど生活圏の近くに潜んでいるケースもあるということです。

草むらに近づくような時は、しっかりと薬剤を塗る、服や体についていないか確認するなどの対策をして、かまれた場合は医療機関で処置してもらいましょう。

ここ数年、新型コロナの影響で外出や遠出を控えるなど人々の生活全般が停滞したことも、野生動物の活発化の背景にあるとみられています。それぞれの特徴をよく理解して、油断することなく対策をとることが大切です。