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【#みんなのギモン】学校の給食室からSOS!夏場は40℃超えも…なぜエアコン設置されない?

2023年9月1日 17:58
【#みんなのギモン】学校の給食室からSOS!夏場は40℃超えも…なぜエアコン設置されない?

『学校の給食室にエアコンがなく、熱中症になってしまいそうで、なんとかしてほしい』

今年7月、日本テレビの情報提供サイトに寄せられた悲鳴です。
全国的に記録的な暑さとなった今年の夏、各地の学校施設でエアコン設置などの熱中症対策が進められていますが、給食室は置き去りになっている実態があるといいます。
なぜ、給食室へのエアコン設置はなかなか進まないのでしょうか?(報道局 調査報道班 吉田理一郎)

■調理中の気温は40℃超え「あまりに過酷…」

横浜市の公立小学校で、給食調理員として働いているという女性。

「夏休み前の7月中旬、給食の揚げ物を調理するため鍋に火をかけると、あっという間に気温が43℃まで上がりました。担当の調理師さんは、暑さで顔を真っ赤にして作業していました」

就業先の給食室にはエアコンがなく、夏場の加熱調理中は室温が40℃を超えることもあるといいます。

「あまりに過酷な環境で、帰宅するといつもぐったりしています。健康を害する恐れもあるので、命を守るものとしてエアコンを設置してほしいです」

栃木県の公立小学校で給食調理員として働く女性は、自分の身は自分で守るしかないと話します。

「水分補給はもちろんですが、頭痛や吐き気など熱中症の症状がみられたときは、我慢せずエアコンがある休憩室で休むように声を掛け合っています」

■記者が給食室を体験…実態は?

給食室の実態はどんなものなのか?私たちは千葉市の許可を得て、市内の小学校の給食室を取材しました。

8月31日の午前。訪れた学校では、4人の調理員が生徒と職員ら合わせて160人分の給食を作っていました。加熱調理が始まった時の外の気温は31℃でしたが、揚げ物のため鍋に火を入れると室温は34℃に上昇し、室内全体がモワッとする熱気に満たされました。
さらに、隣の鍋でもナスの煮物作りが始まり、調理員は大きな鍋から立ち上る湯気を顔に直接受けながら、絶えず全身を使って具材をかき混ぜ続けていました。

調理員「火がついているときは離れるわけにもいかないので我慢です」

加熱調理が始まってからおよそ1時間。時折水筒の水を補給する以外は、鍋の前を離れることはほとんどありませんでした。

調理員「水分が取れないと調理中に頭が痛くなったりすることもあります。 仕事中は気が張っているけれど、終わったあとに一気に疲れが来て体が重くなります」

給食室を出る頃には、記者も調理服の下に着ていたTシャツの色が変わるほど汗をかいていました。

■給食室への空調設置は全国で約6割

文部科学省が、全国の公立学校の給食調理場を対象に行った調査では、給食室に空調設備が設置されている割合は2020年9月1日時点で66.5%でした。

ただ、場所によってかなりの差があり、14府県で50%を下回っていて、市町村別では0%というところも複数みられます。

また、調査対象の「空調設備」には、エアコンのほか、局所的に冷風を送ることができるスポットクーラーが含まれています。これはあくまで補助的な設備で、調理員によると十分ではないといいます。

自治体の規模や学校数、気候の違いなどもあり、一概に設置率だけで判断することはできませんが、設置が進んでいない自治体にはどのような理由があるのでしょうか。

■「暑さ」や「老朽化」 自治体が抱える様々な課題

文科省の調査で設置率が低かったいくつかの自治体に話を聞くと、学校施設に関して取り組まなければいけない、様々な課題があることがわかりました。
ニーズが高まっている熱中症対策では、話を聞いたほぼ全ての自治体で、子どもたちが毎日使用する普通教室へのエアコン設置を最優先に進めたといいます。

普通教室への設置が終わると、次は理科室などの特別教室、さらには災害時に避難所として開放される体育館が待っていると話す自治体もありました。

また、学校施設の老朽化対策も先送りできない課題のひとつだといいます。エアコン設置は財政的な負担が大きいため、既存の施設への設置が無駄にならないか個別に判断する必要があり、改修や建て替えのタイミングに合わせて設置を検討しているという自治体もありました。

話を聞いた自治体の多くは、給食室への暑さ対策の必要性を認識しながらも、限られた予算のなかで、様々な課題に取り組んでいかなければならない実情を明かしました。

■「もうエアコンがないところには戻れない」

一方、文科省の調査後に、給食室へのエアコン設置を決めた自治体もあります。

東京・小金井市では、2026年度(令和8年度)までに、市内の公立小中学校全14校への設置を終える予定だということです。

小金井市でも給食室の暑さ対策は課題でしたが、予算などの面から給食室への設置は先送りされていました。その後、10年程かけて普通教室などへの設置工事が終わる目途がたったことで、給食室にも設置できるようになったといいます。

担当職員「調理員さんからは、もうエアコンがないところには戻れないとの反響をいただいています」

神奈川・座間市も、2022年度に市内の公立小学校11校全ての給食室にエアコンを設置しました。

座間市では、近年、少子高齢化による人口減少や、老朽化した公共施設の維持管理が課題になっていました。その対策として、公共施設等の在り方を検討する再整備計画が進められるなかで、市内の小学校については、今後10年間は統廃合なく維持されることが決まったといいます。

担当職員「いつまで使うかわからない施設に、新たにエアコンを設置するということに慎重な意見があり、私たち担当も声に出しにくい状況がありましたが、維持されるのであれば設置してもいいのではないかと声をあげることができました」

■文科省「必要に応じて支援制度の見直しも」

文科省の担当者「給食室の熱中症対策は重要な課題であり、給食調理員の方々の安全安心の確保のため、自治体が空調設備の設置を計画的に行えるよう支援していきます」

文科省は調査後、エアコン設置率を上げるため、給食室の空調設備に関する国の予算補助の見直しを行っていて、今後も自治体の要望やニーズを踏まえて、必要に応じて支援制度の見直しや充実に努めていきたいとしています。

後回しにされがちであることがわかった給食室の環境改善。記録的な暑さが続くだけに、一刻も早い改善が求められます。

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#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html