【#みんなのギモン】今がシーズン真っ只中 国会議員の海外視察…ヨーロッパが人気、「夜はお酒も」 実態は?
「税金で楽しそうに旅行していると、みなさまの誤解を招いてしまった」
フランス・パリのエッフェル塔前で観光旅行の記念のような写真を投稿した自民党の松川るい参院議員が謝罪に追い込まれました。今回のケースは自民党女性局の海外研修で、費用は党費と各参加者の自己負担だったと説明されていますが、海外視察といえばかつて、ギリシャなどへの10日間の視察に家族を同伴していた衆院議員が国会から厳重注意を受けたこともありました。たびたび問題視されてきた国会議員の海外視察は、今、どのように行われているのでしょうか?(報道局政治部)
■夏は“海外視察シーズン”
衆、参両院の事務局に聞いてみると、この7月から9月初旬にかけて衆議院は14班、参議院は10班の海外視察が行われたり予定されたりしています。国会閉会中の夏は海外視察が相次ぐシーズンなのです。
これらは政党や個人として行くものでなく、衆院では所属する委員会などの班ごとに、参院は政策テーマ別に、5人前後の与野党合同の議員団として派遣される公務です。
衆院議員の行き先を一部、見てみると…。
「議会外交1班(国会対策委員会)」イタリア、フランス、モナコ、スペイン
「厚生労働委員会」 スペイン、オランダ、スウェーデン
「内閣委員会」 ポーランド、ジョージア、ベルギー、フランス
「国土交通委員会」 クロアチア、エジプト、インド
「安全保障委員会」 フランス、ベルギー、イギリス、イタリア、バチカン
「予算委員会」 韓国、モンゴル
「消費者問題特別委員会」 フランス、イタリア、バチカン
「地域活性化・子ども政策・デジタル特別委員会」 フィンランド、スウェーデン
などとなっています。
行き先はほとんどがヨーロッパで、最も多いのがフランス(14班中5班)、続いてイタリア、イギリス(4班)でした。アジアの国だけを視察先にしたのは2班、アメリカはありませんでした。
なぜヨーロッパがこれほど“人気”なのでしょうか、参加議員のSNSを見てみると・・・。
「ジブリ映画の舞台になったと言われる美しい街で、課題となっているオーバーツーリズムの対策を伺いました」(クロアチア)
「ヨーロッパ最大のミサイルメーカーで防衛システムのプレゼンを受けました」(フランス)
「ウクライナからの避難民の実情を様々な関係者から伺いました」(ポーランド)
「スマートキーで管理されるダストシュート、カーシェア、健康センターや食品ロス対策の店舗などがあるスマートシティを見学しました」(フィンランド)
国政の「参考」にするために、ヨーロッパの先進的な取り組みを視察したいと希望する議員が多いと国会関係者は話します。
ただ、見どころの多いヨーロッパだけに、観光名所に立ち寄った様子も議員らのSNSでは随所で綴られています。凱旋門をバックに笑顔で自撮り、「最高に美味しかった」とコメントがついたフィッシュ&チップスの写真…。和気藹藹とした雰囲気も伝わってきます。
■1人の費用は上限196万円
では、海外視察はどう計画され実施されるのでしょうか。
国会法では、議案などの審査や国政調査を目的に議員を海外へ派遣することを定め、そのための予算が組まれています。衆議院の場合、今年度の費用は3億7千万円です。各委員会の与野党会派ごとにメンバーを決め、「どの国へ行くか」はそのメンバーで話し合って決めます。費用は航空代、宿泊代、日当などの合計額が事前に支給され、上限は1人あたり196万円。それを超える分は議員の負担になります。
さて、その国で何を視察するか?
大変なのは現地の日本大使館などの職員です。「この国の教育事情を視察したい」といった“発注”を受けると、誰と面会するか、どの機関を訪れるかをプランニングし、アポを入れていくといいます。フランスやイタリアなど視察が集中する国の大使館などは、多くの時間をこのロジに費やすことになります。
■「お酒を飲んでもらって慰労」も
一方で、海外視察には国政調査だけではないウラの目的もあると、ある自民党議員のベテラン秘書は話します。
「与党と野党の間には、国会中に貸し借りもあって、海外視察は与党側が“ご招待”する意味合いもあるといいます。その分お金も必要なので、与党側はそのお金をどう工面するかも腕が問われます」
そして現地では…。
「もちろんその国の議員との面談や政府機関への訪問など、やるべきことはきちんとやります。ただ、夜は宴会です。野党の皆様ありがとう、とお酒を飲んでもらって慰労するんです。これも海外視察の目的のひとつです」
野党の中には、「税金の使い道が違う」との理由で衆議院の委員会で行う海外視察には参加しないと決めている政党もあります。
■私たちは成果を見られる?
そこに積まれていたのは電話帳のような厚さの報告書の数々。新型コロナ前のものです。憲法と国民投票制度を知るためにドイツやウクライナなどに赴いた際の報告書はなんと452ページありました。
厚生労働委員会の議員らが子育て政策を知るためにイギリスとイタリアに赴いた際の報告書には、児童虐待を防止するための組織や里親のトレーニング施設、女子児童保護・教育施設などを精力的に訪れ、担当者らが運営や環境作りにどう取り組んでいるかをヒアリングした内容が詳細に記されていました。
事務方が懸命にまとめたこれらの報告書は、もともとは議長への提出が義務づけられているものですが、永田町にやってきて手に取って読もうとする人はいったいどれだけいるのでしょう。もったいない思いがします。
帰国後、地元の有権者らに海外視察の報告会を開いて見聞を共有しようと努める議員もいます。SNSはより多くの目にとまる情報発信の場。海外視察についてもピリッとした報告、お願いしたいものです。
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