牛乳“余り”一転…この夏足りない? なぜ
飲食店の休業などの影響で、一時は行き場を失い余ってしまった「牛乳」。その需要に“異変”が起きています。実はこの夏は一転、牛乳不足になる可能性があり、生産者からも困惑の声が上がっているといいます。
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埼玉県のパック牛乳の生産工場。先頃の新型コロナウイルスの影響で、担当者が訴えていたのは――。
森乳業業務本部・菅原成和次長「まるっきりではないですけど、ほぼゼロになってしまいました」
5月までの3か月、打撃を受けたという業者。
牛乳といえば、3月からの一斉休校で給食用の出荷がなくなり、飲食店の休業も相まって、消費が大幅に減少。4月には、農水省が異例の呼びかけを行いました。
農水省の動画――。
「このままでは、搾った乳を捨てたり、最悪の場合、牛の数を減らさなくてはなりません」「毎日牛乳をもう1杯。育ち盛りは、もう1パック。ぜひ、みなさんのご協力をお願いします」
すると、巣ごもり需要も相まって、牛乳類の販売は増加。緊急事態宣言中だった4月末からの1週間は前年比およそ25%増の売り上げを記録したといいます。
順調になってきたようにみえた牛乳の消費。しかし今後、状況が一転する可能性が。
森乳業業務本部・菅原成和次長「余裕というのがなくなりますね。需給のバランスが崩れるのではないかと心配しています」
今度は『牛乳不足』に陥る可能性があるというのです。原因は――。
森乳業業務本部・菅原成和次長「学校の夏休みが短縮することになって」
例年存在しない7月後半や8月の学校給食用の需要ができたから。
業界の試算では、去年7月、8月の需要量は、20万トン台にとどまりましたが、今年は共に30万トン以上を予想。うち、学校給食用だけで2.7万トンの増加を見込んでいます。この学校の夏休みは――。
行田市立桜ヶ丘小学校・金井さち子校長「(夏休みが)全体で14日間短くなっています」「夏は特に冷たい牛乳を飲むことを子供たちはとても楽しみにしています」
牛乳不足で頼みの綱となるのは、一大産地である北海道。例年、他の都府県では、地元での供給量で足りない牛乳を北海道からの輸送で賄っています。
しかし、北海道の牧場は夏に向けての消費増加に懸念を抱いています。
むらかみ牧場・村上隆彦さん「牛乳の生産の落ちる時期と重なってきますので。(ウシは)暑さと湿度にも弱いんです」
ウシは暑さに弱く、夏はもともと、平均より搾乳量が2割ほど落ち込む時期なのです。
むらかみ牧場・村上隆彦さん「おいしい物をいっぱい食べさせたからって、突然牛乳が増えることはない」
生産量を突然増やすことはできず、維持するのがやっとだといいます。業界団体は今後、需給バランスが崩れた場合、加工乳や乳飲料などの積極利用を呼びかけるなど対策を進めています。