×

上下水道「劣化で限界に」…相次ぐ“道路陥没” 緊急点検の結果は? 取りかえ工事、1km「2億円」も【#みんなのギモン】

2025年2月15日 12:37
上下水道「劣化で限界に」…相次ぐ“道路陥没” 緊急点検の結果は? 取りかえ工事、1km「2億円」も【#みんなのギモン】
埼玉・八潮市の道路陥没事故を受けた緊急点検の結果が14日、公表されました。専門家は、今後も下水道管などの経年劣化による異常が見つかる可能性を指摘します。耐用年数を超えた設備は少なくなく、陥没事故も相次ぎますが、補修作業は追いついていません。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「“道路陥没” 全国の上下水道は大丈夫?」をテーマに解説します。

■下水道管の腐食による破損が原因か

小野高弘・日本テレビ解説委員
「埼玉県の道路陥没事故を受けて下水道管の緊急点検が行われていましたが、結果が14日公表されました。埼玉県で新たに3か所、腐食したり破損したりしていることがわかりました」

「埼玉・八潮市の現場では、転落したトラック運転手の救出活動は発生から17日がたっても続いています。そもそもの原因は、下水道管が腐食して破損したことだとみられています」

鈴江奈々アナウンサー
「1か所の下水道管の破損から長期にわたって影響が続いていて、その範囲も広いということで、下水道管の破損が大きな影響を及ぼすものなんだなと痛感しますよね」

■大型の下水道管を調査…その様子は

小野解説委員
「そこで全国の地面の下は大丈夫だろうかと、下水道管の緊急点検を行いました。関西なら兵庫・大阪・奈良、関東だと埼玉・東京・神奈川・千葉の7都府県ですが、点検したのは八潮市の現場のように大規模な下水道管で、例えば直径2m以上のものがある場所です」

「その規模の下水道管を対象にして、マンホールは約1700か所の内部を調査したそうです。その上を走る道路は約390kmを調べたそうです」

「東京都内での点検を様子を取材しました。4日、東久留米市ではマンホールから下水道管に作業員が入り、ひび割れがないかなどを目で見て点検していました。東京都では大型の下水道管約19kmが対象になりました」

「目で見るのが難しい場所はカメラを入れて、胃カメラのように下水道管の中を確認します。路面の下に空洞が生じていないかどうか調べる車もあります。車両の中から道路に向けて電磁波を当てると、1.5~2m程度までの深さで空洞がないかがわかるそうです」

■下水道「緊急点検」の結果は?

小野解説委員
「公表された結果について見ていきます。下水道管について、東京や大阪など6都府県では異常は確認されなかったものの、埼玉県では新たに3か所異常が見つかりました」

「このうち1か所は下水道管とマンホールとのつなぎ目にずれが生じる破損が確認されました。2か所ではマンホール内のコンクリートが腐食していて若干削れていたということです。それぞれ改修工事に着手したり、対策の準備を進めたりしているそうです」

「路面の下の空洞の調査については、補修の緊急性が高い空洞が確認されたということです。埼玉と奈良で2か所ずつ、東京と神奈川で1か所ずつ。これらは下水道管が原因ではなく、補修は終わったということです」

「この結果をどう見るか。上下水道の事業に詳しい近畿大学経営学部の浦上拓也教授は『今回の点検箇所以外の場所で、同じように経年劣化による異常が見つかる可能性はある』と指摘しています」

忽滑谷こころアナウンサー
「今回は7つの都府県でしたが、それ以外に広げていくとなると大規模なチェックになりますよね」

■下水道管が原因で…道路の陥没相次ぐ

小野解説委員
「下水道管が原因の道路の陥没というのは近年相次いでいます」

「茨城・水戸市では去年10月、下水道管の老朽化で道路が陥没しました。2019年には千葉市で、破損した下水道管に土が流れ込んで道路が陥没しました。この時は通りかかった車が穴に落ちかけました。運転していた男性にケガはありませんでした」

■上水道が原因で穴が開いた事故も

小野解説委員
「今年2月11日には千葉・大網白里市で地下の水道管が破裂。道路から水が激しく吹き出しました。この時道路も陥没し、直径約5m、深さ約1.5mの穴が開きました。この事故原因は下水道管ではなく水道管。それぞれの家に水を送る水道管でした」

「これは飲み水にもなるので衛生上密閉され、マンホールとつながっているわけではなく、点検は難しいです。そんな水道管も異常がないか、見ていかなくてはいけないということになります」

刈川くるみキャスター
「全国ではかなりの数でしょうし、そこからもし工事となると、人手も時間も必要になってきますよね」

■上水道と下水道、どれほど劣化?

小野解説委員
「各家庭と結んで水を運んでくれている水道管の取替工事は見たことがありますか? 月日がたつと劣化してきます。全国でどのぐらい劣化しているのか、国土交通省の資料で調べてみました」

「上水道は耐用年数が40年ですが、それを超えているのは約24%あって約18万km。地球4周分以上です。下水道は耐用年数の50年を超えているのが約7%で、約3万kmに及びます」

■水道管や下水道管の維持管理は先送り

小野解説委員
「なぜ補修作業が追いついていないのか。浦上教授によると、上水道を取りかえるのに1kmあたり都市部では2億円、地方でも1億円かかります。下水道の場合はさらに深い場所にあるため、それ以上お金がかかります。そのお金をどうするのかが問題です」

「それぞれの自治体の水道局は原則、水道料金を財源とする独立採算です。予算も人材も足りない。水道管や下水道管の維持管理は先送りされ、その結果、劣化が進んで限界が来ているといいます。『住民の理解を得て水道料金を上げることも必要だ』と話しています」

鈴江アナウンサー
「上下水道はライフラインですし、命を守る大切な設備ですよね。かつ、劣化して事故が起きてしまうと命に関わります。財源も含めて国を挙げた取り組みが求められているのかなと感じますね」

小野解説委員
「国交省は来週に対策検討委員会を開き、今後の点検方法や点検の頻度をどうするかなどを検討するということです」

(2025年2月14日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

【みんなのギモン】

身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト

最終更新日:2025年2月15日 12:37