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“市長の秘策”で温泉街が二分 なにが?

2020年9月22日 19:36
“市長の秘策”で温泉街が二分 なにが?

新型コロナウイルスの影響でダメージが大きい観光地。豊かな温泉で知られる街の市長が打って出たのは、起死回生の策でした。しかし、関係者からは不安や反発の声もあがっています。温泉街によって賛否が分かれているわけとは、なんなのでしょうか?

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栃木県那須塩原市。東京駅から新幹線などでおよそ1時間半。市の半分が山岳部という豊かな自然はもちろん、1000年以上の歴史をもち、豊富な泉質が特長の那須塩原の温泉地。

しかし、その温泉地で今、市長が決めた新たな取り組みに温泉組合が大反発。

塩原温泉旅館協同組合・田中三郎理事長「私からすればね、本当にけしからんことなんですよ。こんなことは言いたくないですけど、市の事業に一切協力できない」

塩原温泉・やまの宿『下藤屋』「旅館の承諾もなしにですよ。勝手に値上げするのは認められない」

いったい、なにが起きているのでしょうか。

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こちらは塩原温泉の入り口にたたずむ、創業136年の「湯守田中屋」。

渓谷の自然を満喫できる源泉掛け流しの露天風呂や、黒毛和牛や鮎など、地元の食材をふんだんに使った炉端料理が自慢の老舗旅館です。

その社長を務めるのが、市長に怒りをぶつけていた田中三郎さん。

48の施設を抱える塩原温泉旅館協同組合の理事長でもある田中さんが今、不安を感じているのが…。

塩原温泉旅館協同組合・田中三郎理事長「昨日までは陰性だけど、きょうかかるか分からない。それを考えると本当に陰性ですと宣言して、それが皆さまに届くのかどうか」

市が進めようとしている「観光関係者全員への定期的なPCR検査」です。

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市内の旅館で働く人など、観光関係者およそ600人を対象に月に1回、PCR検査を定期的に実施。陽性者が出た場合は、旅館名などを速やかに公表するとしています。

導入の狙いについて市長は。

那須塩原市・渡辺美知太郎市長「那須塩原市が、日光とか鎌倉とか軽井沢とか京都とかには普段だったら逆立ちしても勝てないわけです。でも今コロナ禍だったら、逆にPCRを定期的に受けてますと、日本一安全な観光地を目指してるのでお力添えくださいと言えば、理解してくれる方多いと思うんです」

感染対策を“見える化”。陽性者がいたとしても早期に対応し、クラスターなどを防ぐ狙いもあります。

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それに対して塩原温泉側は。

塩原温泉旅館協同組合・田中三郎理事長「(PCR検査を)やること自体はいいと思うんですけど、これで集客しようと思う集客の人数よりも、もし出たときのリスクがとてつもなく大きい」

PCR検査の結果、万が一陽性者が出た場合の風評被害などを懸念しているといいます。

組合員にとったアンケートでも。

組合員:コロナの方への嫌がらせ、風評被害をよく聞きます。
組合員:PCR検査は本来、疑いのある場合に行う検査。

定期的なPCR検査について賛成11に対し、倍以上の24施設が反対する結果に。

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さらに懸念しているのは、その財源について。

市はPCR検査にかかる費用を一部負担するとしていますが、その財源として検討されているのが宿泊客が支払う入湯税。

12月以降、150円から350円に一律200円引き上げるというのです。

しかし、その案に批判が殺到。今月4日、市が開催した説明会では温泉事業者から市長に対し怒りがぶつけられました。

塩原温泉旅館協同組合・田中三郎理事長「入湯税は我々にとって非常に神聖なものなんですよね。我々の懐に手を突っ込んで、金をむしり取っていくような類のものなんで、私からすればね、本当にけしからんことなんですよ」

塩原温泉・やまの宿『下藤屋』「旅館の承諾もなしにですよ。勝手に値上げするのは認められない」

入湯税の引き上げによって、客足が遠のくことを危惧していたのです。

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一方で、那須塩原市のもうひとつの温泉地・板室温泉の組合は。

板室温泉旅館組合・室井孝幸組合長「板室温泉は全軒あげて、那須塩原市の考えに賛同いたします」

市の考えに全面的に賛同。なぜ賛同するのか、板室温泉の組合長が経営する旅館を訪ねると。

板室温泉旅館組合・室井孝幸組合長「行きたいけど行けない、もうちょっと我慢しますってお電話は頂くんですが、ほぼほぼ、うちでは95%くらい減になってます」

売り上げは95パーセントも減少。

板室温泉旅館組合・室井孝幸組合長「私どもも風評被害とか、不安の気持ちも重々分かります。でもやはり、お客さまにその後訴えていくのにも、自分たちでまず検査を受けて、安心ですよというのが定期的に分かれば、お客さまも安心していただけるんじゃないか」

この状態を打開するには、「安心・安全」をよりアピールする必要があると考え、今回、市の取り組みに賛同したといいます。

早速、室井さんは今月15日、PCR検査を受診。

板室温泉旅館組合・室井孝幸組合長「今も結果が出るまでがドキドキなところが正直なんですけど」

検査結果は、陰性だったということです。

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その後、市と事業者側は話し合いを重ね、一律350円への引き上げは見送りになりました。

塩原温泉旅館協同組合・田中三郎理事長「もちろん観光が基幹産業なので、これからこれを乗り越えて、どんどんお客さまに来て頂きたいのは変わらないですね」

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賛成派も反対派も、那須塩原を思う気持ちは同じ。

その後、PCR検査の導入は徐々に進んでいて、宿泊料金に応じて入湯税を段階的に引き上げる案の採決が、来週28日に行われます。

※映像内では「塩原温泉・やまの湯『下藤屋』」と表記していますが、正しくは「塩原温泉・やまの宿『下藤屋』」です。

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