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児童虐待死 ネグレクトが身体的虐待上回る

2020年9月30日 23:36

2018年度に虐待で亡くなった子どものうち、保護者が世話を怠る「ネグレクト」による死亡が、身体的虐待による死亡を初めて上回ったことがわかりました。

厚生労働省の専門委員会がまとめた報告書によりますと、把握可能な限りでは、2018年度に児童虐待で亡くなった子どもは73人で、前の年度より8人増えました。

このうち、心中の被害者が19人、心中以外の虐待被害者が54人で、心中以外の虐待で亡くなる子どもは、過去10年間、およそ40人台から50人台で推移しています。

心中以外の虐待で亡くなった54人を分析したところ、例年と同じく0歳児の割合が最も多く、およそ4割を占め、ついで1歳児がおよそ1割で、学齢期以降の死亡は近年かなり減っているということです。

虐待のタイプを調べた結果、保護者が世話を怠るいわゆる「ネグレクト」による死亡数は25人で、身体的虐待による死亡数は23人で、ネグレクトが身体的虐待を初めて上回りました。

専門委員会の委員長、山縣文治・関西大学教授は、「子どもを遺棄(置き去りに)する例が増えており、大人が安全だろうと思っても、生まれた直後の赤ちゃんは、世話をしないとすぐに亡くなってしまう。そうした傾向が数字の上でも現れた形だ」と分析しています。

専門委員会は、調査・分析の結果について、「10代の母親が誰にも相談できずに出産・遺棄に至るなど、妊娠自体が他者に気づかれていない事例が少なくない。妊娠した実母の変化などに気づき、支援につなげる機会があれば、その結果は違ったものとなった可能性もある」などとして、地方公共団体に対し、「SNS等を活用した相談体制や、訪問型支援などを展開してほしい」と提言しました。

一方、今回、専門委員会は、特に家庭内暴力、DVと児童虐待との関連についても分析を行いました。2007年度から2017年度までに虐待で亡くなった子ども587人の母親を調べたところ、およそ2割にあたる51人が、夫や交際相手から暴力、いわゆるDVを受けていたということです。

これらの例を分析したところ、母親がDVを受けていた場合は、受けていない場合に比べて、より所得が低く、親族との接触が少なく、母親が精神的問題などを抱えている割合が多いといった傾向が明らかになったほか、10代で妊娠・出産を経験した人が、DVなしの場合より多くいました。

報告書では、「DVのある家庭では、加害者により、被害者が社会や親族から孤立させられてしまうことがある。実母自身の社会経験の少なさなども相まって、孤立した場合に、子どもの虐待が深刻な結果になる場合が多いのではないか」「DV被害者の『暴力がなくなった』などの発言で『問題ない』とするのではなく、子どもを守ると同時に、DV被害者を守る視点を持ち支援することが必要だ」などと考察しました。

そして、「DVの加害者、被害者が、その関係から回復する力をつける支援も検討してほしい」と呼びかけました。