東京五輪 選手らの輸送、悩みは首都高?
来年に延期された東京オリンピック・パラリンピック。前例のない延期決定に今後はギモンだらけ。大会運営を取り仕切る大会組織委員会のキーマンに話を聞くシリーズ企画。選手や関係者などを運ぶ「輸送」について、大会組織委員会の輸送局、神田昌幸局長に聞いた。
■首都高が悩みのたね
東京大会の困難な課題のひとつが「交通マネジメント」だ。東京は交通量が非常に多い都市。選手や大会関係者を運ぶのに首都高の特殊なつくりが頭を悩ませたという。
「首都高速が日常的に渋滞することが多いですから、こういったものをどう渋滞させない状態で車を、大会関係の車を走らせるかということがポイント」
2000年のシドニー五輪以来、大会中は「オリンピック専用レーン」が公道に導入されてきた。しかし、首都高は片側1車線もしくは2車線しかなく、専用レーンをつくると一般車両に負荷をかけてしまうため、首都高では専用レーンの導入をとりやめた。
その代わりに導入されたのが一般車両に協力を呼びかける桜色の看板だ。
「オリンピック関係者が通りますよ。選手がバスに乗って走りますよというサインですので、オリンピックだから時間に遅れられないんだなということで一般のドライバーの方にも一定の配慮をお願いしたい」
■交通輸送のデジタル革命
オリンピック・パラリンピックの開催にむけ、輸送分野においては3つの対応が検討されている。
1つめは「交通需要マネジメント(TDM)」。交通量をできるだけ落とすためにテレワークや時差出勤などを呼びかけ、輸送が円滑になるように協力を求めるものだ。
2つめは「交通システムマネジメント(TSM)」だ。
「渋滞する少し手前で走ってもらうと、一番交通量がたくさん処理ができると、たくさん走れる」
「あと10%15%交通量が増えていくと厳しいぞというときに、関連するインターチェンジの入り口を少し減らしてみたり、上流のところで車線数を減らしてみたり、そういうことを少しずつやりながら渋滞をさせないようにするダイナミックなコントロールなんです。これは全く新しいやり方なので、交通輸送の世界では東京大会は交通輸送のデジタル革命みたいなことをおっしゃる方もいます」
3つめは、「ロードプライシング」。交通量をおさえるために通行料をとるというものだ。選手やメディア関係者などを運ぶバスだけで2000台以上、自動車を約3500台使う東京大会。1台ずつGPSを取り付け状況を把握し、コントロールし、安全で円滑な輸送を目指すという。
■コロナと輸送
輸送局では選手や関係者の出入国から競技会場への移動、宿泊などあらゆる部分において新型コロナウイルスへの対応が求められる。
「輸送ではバスの運転手から(選手に)感染したら絶対にいけませんので、ドライバーとのアクリル板になるかビニールになるかわかりませんが、遮蔽(しゃへい)をするとか。バスもいっぱい乗らないで少し人数を落とした形で乗っていただくケースも必要なんじゃないかな」
「いろんな対策を積み重ねていって、全体として安全で安心できる大会が実現できるんだろうと思います」