#ラグビーを止めるな…高校生に新たな希望
バンキシャ!が注目した、「#ラグビーを止めるな」。新型コロナウイルスの影響でラグビーの大会がなくなり自分のプレーをアピールする場を失った高校生。しかし、SNSを駆使したプロジェクトに参加すると、人生が大きく動き始めました。
車から降りてきたのは廣瀬俊朗さん。元日本代表のキャプテンだ。廣瀬さんが足を運んだのは、桐生第一高校ラグビー部が練習するグラウンド。そこで声をかけたのは3年生の横田善さん。彼は廣瀬さんが関わる、“ある”プロジェクトによって、人生が大きく変わったという。
過去2回、全国大会に出場。今年もその舞台を目指し、卒業後はラグビーで大学進学を考えていた。しかし、2月の大会はケガで出場を断念。ケガが治り、さあこれからという時に…。
横田善さん「高校総体と7人制が、コロナの影響でなくなった」
自分のプレーを大学のスカウトにアピールする場がなくなったのだ。
横田善さん「両親と話していたのは専門学校いくか、就職するかと」
夢をあきらめかけていた時、出会ったのが「#ラグビーを止めるな」というプロジェクト。発案者は野澤武史さんだ。元日本代表で、現在はラグビー協会で選手のスカウトに携わっている。
野澤武史さん「コロナ禍で高校ラグビーの選抜大会がなくなって、リクルーターの方からすごく電話をもらうようになって『どこかに良い選手はいないか?』と」
廣瀬さんもコロナ禍の現状に危機感を抱きこのプロジェクトに加わった。
廣瀬俊朗さん「そんな高校生を助けるようなことを、絶対にしないといけない」
選手たちが撮った自慢のプレー動画をSNSに投稿。それを大学やトップリーグのスカウトたちに見せる仕組みだ。いわば、選手とスカウトとの橋渡し。
そのプロジェクトを知り、自分のプレー動画を投稿したのが横田さんだ。すると1時間もたたぬうちに…。
横田善さん「大学の監督さんから『動画見ました』『ちょっとお話うかがっていいですか』と」
大学からスカウトの話が飛び込んできたのだ。
横田善さん「感謝してもしきれない」
そして、このプロジェクトは更に多くの高校生に夢を与えていた。
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バンキシャ!が訪れたのは、千葉県立千葉高校ラグビー部。毎日、検温や手洗いを徹底して練習が行われている。新型コロナの影響で、3月から6月半ばまで部活は休止を余儀なくされた。タックルなどの接触プレーは8月から始まったばかり。体力もまだ、戻っていない様だ。
過去、2度、全国大会に出場し、今年は県の新人戦で7年ぶりにベスト4に入った。選手23人をまとめるのが、3年生で主将の矢崎隼太さん。身長184センチでフォワードだ。
矢崎隼太さん「フォワードもバックスも自分の仕事が終わったあと、次、どう動くか考えないと」
矢崎さん率いる千葉高校ラグビー部も、「#ラグビーを止めるな」に動画を投稿することにしている。
矢崎隼太さん「県千葉のラグビーを試合する機会が少なくなっているので見てもらいたい」
自分たちのプレーを多くの人に見て欲しいという純粋な思いだ。9月。
監督「(動画を)ツイッターにあげるのをやっていきたい」
この映像は、主将でフォワードの矢崎さんのプレーだ。黄色と紺の横シマジャージーが千葉高校。体格をいかした豪快なタックルを決める。相手が3人がかりでも果敢に挑んでいく。
矢崎さんが選んだ一押しプレーをOBに編集してもらった。その出来栄えに…。
矢崎隼太さん「良い所だけ集めると自分が上手くなった様に見える。自信が付きます」
早速、自己アピール文を書いて投稿しようとするが、慣れない作業に四苦八苦。
マネジャー「数字、半角にしてやってくれない?」「ポジションは『ポジション』って入れて欲しい」
マネジャーからの指導が入ってしまった。
バンキシャ「マネジャー細かいですね」
矢崎隼太さん「しっかりしています」
マネジャーやOBの力を借りて無事、投稿できた。千葉高校では矢崎さんを含む5人の3年生が動画をあげた。果たして、どれだけの人が見てくれるのか?
数日後。矢崎さんの動画を見ていたのは…廣瀬さんだ。矢崎さんのタックルに思わず。
廣瀬俊朗さん「おーすごいタックル」「ディフェンス、タックルすごい」
選手たちの表情を思い描きながら感想を書き込んでいく。翌日。部員たちは筋トレに励んでいた。すると、監督が声をかけた。
監督「1回集合しよう」「この前あげた動画に、コメントがアップされていたので…」
その再生回数、1万6000回。
マネジャー「本当に今まで私たちしか知らなかったカッコイイ人がどんどん(世間に)広まった」
廣瀬さんのコメント「ビッグタックルとナイスジャッカルやね!!主将としても、大変な状況の中でどうチームをまとめていくのか楽しみ!」
矢崎さんと同じ3年生で副主将の本郷さん。彼の動画には…。
廣瀬さんのコメント「強気のナイスランやね!!タックルの踏み込みも良いし、将来が楽しみ」
矢崎さん、緊張しながら、お礼の返信をする。
矢崎さんの返信コメント「返信ありがとうございます!ジャッカルとタックルに更に磨きをかけて頑張りたいと思います。最後の大会全力で戦います!」
矢崎さん「こんな有名な方から(コメントが)来るとは思っていなかったのですごいうれしいです」
これはコロナ禍に差し込む一筋の光。
本郷さん「僕たち以外のラグビー選手もアピールする場は相当、なくなってしまったので、こういう形で大人の方に評価してもらえるのは、良い方法だと思う」
廣瀬俊朗さん「高校生にとって、いろんな人に映像を見てもらえるという、もう1つのモチベーションをこの活動を通じて作れたのは良かった」
新型コロナで、スポーツを取り巻く環境は大きく変化した。だからこそ、柔軟な発想が必要だとこのプロジェクトを発案した野澤さんはいう。
野澤さん「本当に止めるなだと思う、スポーツを。そのために、何を大人たちがやるのか。やらなければ0ですし」「100点満点じゃなくても良い。0より良いよねとやっていくというマインドに変えていかないと、コロナの中でスポーツをやって良かったなと思える子供を増やしていけない」
そして今、「スポーツを止めるな」という掛け声のもと、サッカーや野球など、11競技が動き始めている。
(11月8日放送『真相報道バンキシャ!』より)