日本のコロナ治療リードの医師が苦渋の訴え
新型コロナウイルス感染症の治療や研究の最前線、国立国際医療研究センターで、今年1月の国内での発生初期からずっと患者の治療、研究にあたってきた忽那賢志医師に11月30日、現状を聞きました。
忽那医師は非常に厳しい表情で、「うちもコロナ用の病床の9割が埋まっている」と述べたほか、自身の状態について「そろそろ限界に達するかも」と苦渋の訴え。
年末年始に備え、今こそ個人個人が3密を避け、会食も控えて、と呼びかけました。
■■この1週間で重症者急増■■
忽那医師:ここ1週間くらいは、重症者がかなり急に増えてきている状況です。以前、比較的軽症な人も入院していましたけど、今は重症度が上がっていて、重症度が上がると、対応する医療スタッフの数も必要になりますし、それだけ診察も時間がかかったりしますし、やっぱり負担がかかってきている状況です。
(忽那医師自身は)武漢発のチャーター便の乗客らも診て、第1波がありまして、正直、緊急事態宣言が終わる頃から1か月くらいは、少し休む時間があったんですけど、そこから第2波に突入して、第2波は結局、患者さんの数が減りきらずに、横ばいになったままの状況でした。
第2波の後半から高齢者の比率が増えていったので、病院としての負担は変わらなかった。そして、第3波はガッと増えてきているところなので、あまり休む暇なく1年を過ごしている感じです。
記者:新型コロナの治療で、医療従事者が感染しないように神経を使うことは変わらずですか?
忽那医師:感染防止対策に関していうと、あまり最初から変わっていない。そこは手が抜けないところで、(医療用ガウンなど)個人防護具をつけて診察しないといけないので、患者さんひとりひとりにつき、防護具を着脱してますから手間というのは変わらない。
■■第3波は医療への負担大■■
記者:第1波、第2波と第3波の違いは?
忽那医師:第1波は重症者の割合が多かったが、感染者数が多くなかった。第2波は数としては多かったけど、重症者の比率が少なかった。第3波は感染者の数も多いですし、その中に占める重症者の割合も第2波よりも高い。今までで一番、医療機関に負担がかかっている状況だと思います。第2波は、最初は若い世代から流行が広がっていきましたよね。第2波が後半になるに従って、だんだんといろんな年齢層に感染が広がっていってたんですけど、年齢層が広がってる状況のまま、第3波にむかって患者数が激増している。
記者:重症者の治療は経験を積まれてきたと思いますが。
忽那医師:治療の内容は第1波や第2波の始まりの頃からあまり大きく変わっていません。抗ウイルス薬のレムデシビル、効果があるかないか、とか議論されていますけど。それに加えてデキサメタゾンっていうステロイド、炎症を抑える薬、これはほぼ間違いなく効くと思います。その2つを併用して使うことが多い。また、血栓ができたりすることが多いので、血をさらさらにするような抗凝固薬を使うこともあります。重症の患者さんって点滴類とか、口の中に管が入っていたりするので、コロナ以外のばい菌による肺炎や別の感染症などを合併することが多い。そういう意味で重症患者さんの管理はなかなか大変なんです。
記者:患者さんご自身も後遺症も含め、新型コロナウイルスに感染すると大変なのですよね?
忽那医師:後遺症、症状が残る人は、2か月後で2割くらいいるといわれています。逆にいうと8割の人はほぼ元の状態に戻っているが、軽い症状の人でもその症状が続いて、倦怠感、だるさとか胸の痛みとか残る人はいますので、かからないに越したことはない。ECMOとか人工呼吸器とか長期間にわたってつけていると、体の筋肉を全然使わなくなって、回復したとしてもその後、長期間のリハビリが必要になる。元の生活・元の状態に戻るというと月単位、数か月かかることが多い。
■■病床数=すぐ入院可ではない■■
記者:病床についてうかがいます。ベッド数があったとしてもすぐに使えるわけでないのですよね?
忽那医師:病床をコロナにあてることを見込んでいるという病院でも、今すぐにスタッフが確保できないということもある。コロナ以外の患者さんが入院しているベッドをコロナ用に使う予定なので、すぐにその患者さんが退院できるわけではないので、すぐにベッドがあけられないとか、いろんな事情があると思う。病院も新型コロナの影響で、すごく経営が悪化してるところが多いので、ぎりぎりまでコロナ以外の患者さんも診ていて、なかなかすぐにコロナ患者さん用の病床が確保できないところが多いんだと思う。できるだけ、コロナ以外の患者さんの診療も保ちつつ、コロナの患者さんも診ようという病院が第1波の時と比べると多いと思うが、すぐにはコロナ用のスタッフや病床が確保できないということだと思う。
■■うちも9割埋まっている■■
記者:今危惧していることは?
忽那医師:重症者が増え続けて、入院できるキャパシティーを超えることですかね。うち(国際医療研究センター)もコロナ用の病床が9割埋まってます。少なくともうちの病床でいうと、かなり限界に近いところまで来てます。これ以上、重症者が増えると今の診療体制では難しいので、うちの病院でも、ほかの診療科の先生を総動員ってことになる可能性があるんですけど。そうすると今まで、ほかの科の先生方が診察されていた患者さんたちは、規模を縮小せざるを得ない。
■■年末年始のため、今、個人が対策を■■
記者:あらためて先生から呼びかけをお願いします。
忽那医師:さんざんいわれてることではありますけど、手洗いしましょうとか、3密避けること。会食で感染される方が多いので、できるだけ会食も控えて、デリバリーとかテイクアウトにした方がいいと思います。そういった個人の感染対策が基本的には一番大事なものです。営業時間の短縮とか、飲食店がされていますけど、それを無駄にしないためには、個人個人がしっかり感染対策をする時期です。今しっかりと対策をしておかないと、年末年始というのはどうしても病院側も手薄になる時期なので、その時期に感染が爆発してしまうと、悲劇的な状況になりかねませんので、今のうちにできる限り、感染者を減らしておくというのが、穏やかな年末年始を迎えるために大事だと思います。
■■そろそろ限界に…■■
記者:先生自身の体調はいかがでしょうか?
忽那医師:体調はずっとよくはない。ずっと緊張感がありますから、なかなか休む暇がなくて、医療従事者全体がそうだと思う。コロナを診療している医療従事者は1年ずっとやってますから、疲れ切ってると思いますけど。そろそろ限界に達するかもしれません。医療従事者を助けるという意味でね、感染対策をしていただきたい。