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一家の墓は米軍基地の「フェンスの中」…自由に墓参りできず 隊員が墓を整備 沖縄復帰50年の現実

2022年5月13日 9:01
一家の墓は米軍基地の「フェンスの中」…自由に墓参りできず 隊員が墓を整備 沖縄復帰50年の現実

沖縄は5月、日本に復帰して50年を迎えます。うるま市の米海軍基地には県民の先祖代々の墓があり、墓参りをするには2週間前までに申請する必要があります。米軍の隊員は基地内の墓の整備や除草に汗を流しますが、墓参りすら自由にできない現実があります。

■先祖代々の墓…許可なしに入れず

沖縄県の兼堅(かねけん)さん一家が、墓参りの準備をしています。

伝統的な沖縄料理の重箱の中に、結んだ昆布や豚の三枚肉が入っています。甕出しの泡盛を瓶に詰めます。「お墓に供える。もう昔から決まっているっていうか」

一家が向かった先は、うるま市にあるアメリカ海軍の基地「ホワイト・ビーチ地区」でした。先祖の墓は、この基地のフェンスの中にあります。

家族がおばあを支えながら斜面を上り、墓に向かいます。100年以上前からこの場所にある先祖代々の墓ですが、沖縄戦で米軍に占領されたため、現在、米軍の許可なしに立ち入ることはできません。

おばあは「(新型)コロナ(ウイルス)」にも負けないように見守ってください。お願いします。おじい、おばあ」と、手を合わせて祈ります。

墓参りをするためには、2週間前までに申請が必要といいます。

兼堅太陽さん(43)は「毎年草が生えて車が通りづらい状態だったんですよ。でも(草が)刈られている」と言います。墓の周りの雑草が、きれいに刈り取られていました。

■日本周辺の有事に対応…「補給拠点」

なぜなのか、ホワイト・ビーチを取材しました。

ホワイト・ビーチは、日本周辺が有事の際に対応する、アメリカ海軍・第七艦隊の補給拠点です。ステルス戦闘機を搭載した揚陸艦や、原子力潜水艦が寄港することもあります。隊員たちが、燃料や物資、武器の積み下ろしを担います。

在沖米海軍艦隊活動司令部 パトリック・ジーカン司令官
「ホワイト・ビーチの海軍施設はとても重要です。沖縄の人たちが私たちを受け入れていることについて、地域の安全や日米同盟を守るという任務の重要性を理解してくれていることについて、感謝しています」

■「重要任務」で…墓の周りを除草

隊員たちが重要な任務の1つとしているのが、基地にある墓の整備です。兼堅さんの墓の周りを除草したのも、隊員たちでした。

海が見える高台を案内してもらいました。今は親族が訪れることがなくなってしまった、古いお墓も隊員たちが整備していました。

米海軍 ジェシカ・ハテル二等兵曹
「このお墓は、長い間ここにあります。戦争が終わる前、米軍がここに来る前から。私たちはこのお墓に敬意を払っています。なぜなら沖縄の文化の重要な一部だからです」

■手続き間に合わず…外で祈る人も

取材した日は多くの住民が墓参りをし、600人近くが基地に入りました。その一方、フェンスの外では、基地のお墓に向けて手を合わせる人がいました。

墓参りに来た人は「手続きが遅れて、できなかったから」と言います。毎年、基地の中で墓参りをしていましたが、今年は申請が遅れたため、入ることができなかったといいます。

「向かいでも思いは通じていると思うので。やっぱりね、思いは届いているかな」

墓参りすら自由にできない現実がありました。沖縄復帰から50年。基地のフェンスは、今も家族と先祖を隔てています。

(5月12日『news zero』より)

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