森喜朗会長の謝罪会見は逆効果?その余波は
■IOCからの電話
この問題をめぐって5日、新たな動きがありました。橋本五輪担当大臣は、IOCのバッハ会長から4日夜、直接電話があり、森会長の謝罪を「IOCとしてよく理解した」「引き続き東京大会の成功にむけて努力してほしい」と言われたことを明らかにしました。つまりIOCとしては、森会長の謝罪で問題が終わったと考えているとして、これ以上問題視しない考えを伝えました。しかし、森氏の発言とその後の会見は、色々なところで波紋が広がっています。
小池都知事は先ほど、森会長から「本当に申し訳ない発言を心底撤回する」と言われたといいますが、5日朝には「オリパラを安全安心に進めるのが私のミッションであり、組織委員会としてのミッションであるとすれば、大きな事態に直面している。ボランティア辞退の話やそもそも抗議の電話であったり、たくさん来ていると聞いているので」とも明かしています。
■森会長辞任を求める声
東京都によりますと、4日から数百件の電話があり、ほとんどが森会長の辞任を求める内容だということです。また、組織委員会にも苦情の電話や「ボランティアの辞退の仕方を教えて欲しい」といった問い合わせがきているそうです。約8万人のボランティアが参加する予定で、大会の運営には欠かせない存在です。
批判の矛先は、4日の謝罪会見での森氏と記者とのやりとりや、態度にも向けられています。森氏が女性理事について「みんなわきまえておられる」と発言しました。「わきまえる」とはその場の状況に応じた言動をする意味ですが、この発言について記者から問われる場面がありました。
――わきまえるという表現を使われていたが、女性は発言を控える立場だという認識か
森会長「いや、そういうことでもありません」
――なぜああいう発言に?
森会長「場所だとか時間だとかテーマだとかに合わせて話していくことが大事なんじゃないですか。そうしないと会議は前に進まない」
――それは女性と限る必要ある?
森会長「だから私も含めてって言ってるじゃないですか」
――前段の段階で…
森会長「そういう話はもう聞きたくない」
このように苛立ちを見せる場面もありました。
この会見を見た都庁幹部は
「謝罪と撤回だけで済ませれば良かったけれど逆ギレしてたね、会見は逆効果だったんじゃないか」
と述べています。
■海外やSNSでも批判相次ぐ
実際に海外メディアからも批判の声が相次いでいます。イギリスでは「謝罪会見の場でも女性差別問題について軽視し続けた」。イスラエルのメディアも「深い後悔は見えず、不本意ながら謝罪しているのは明らかだ。普通なら辞任に値するものだ」としています。スイスの新聞は「その地位を頑なに守りたいようだ」としています。
さらに、ネット上でも波紋が広がっています。Twitterでは「#Moriresign」(森氏は辞任しろ)というハッシュタグや、「#oldboysclub」(古い男性のグループ)というハッシュタグ。森氏の「わきまえておられる」という発言を皮肉った「#わきまえない女」などの投稿がトレンド入りしています。
オリンピック金メダリストでカナダのIOCの委員でもあるヘイリー・ウィッケンハイザー氏は、自身のTwitterに「朝食ビュッフェのときにこの男を絶対に問い詰めてやる。東京で会いましょう!」と投稿しています。
■日本は男女格差後進国?
海外の論調をみますと、世界的にみても日本の女性の社会進出が遅れていることが今回の森会長の発言の背景にあると指摘されています。世界経済フォーラムの最新の報告書によりますと、日本の男女の格差の度合いを示す指数は、153か国中121位です。アメリカよりも低く、アジアでも中国や韓国よりも低いです。
今回の発言は、JOCの評議員会で女性理事の積極的な任用について議論する中で出たものです。JOCは女性理事の比率を40%に引き上げる目標を掲げていますが、現状は25人中女性は5人で、20%と大きく下回っています。40%という数字を目標にしている理由は、組織における女性の割合を議論する際に重要な概念として、クリティカル・マスという考え方があるからです。
クリティカル・マスとは「ものごとが大きく変化する分岐点」という意味です。組織の多様性を確保するためには、女性リーダーの割合が最低でも30%は必要とされています。例えば10人のグループのうち女性が1~2人ですと、過度なプレッシャーがかかったり、発言しにくかったりして、男性に埋もれてしまいます。3人を超えて少数派が一定の数に達すると、少数派であるための居心地の悪さを感じなくなることで、自由に意見が言えて、互いに協力し合って、組織に影響を与えることができてくるといいます。
IOCは五輪憲章で「男女平等の原則の完全実施」を掲げています。性別に限らず、人種や国籍などあらゆる面での多様性を尊重しようという世界的な潮流の中で、発言の撤回と謝罪だけで幕引きとできるのか、信頼回復に向けた組織委員会の今後の対応が注目されます。
(2021年2月5日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)