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尿で、唾液で、涙で… 自宅で“がん検査”

2021年2月7日 22:59
尿で、唾液で、涙で… 自宅で“がん検査”

重要性を認識しつつもコロナで控える人もいる「病院でのがん検査」。一方、病院に行かなくてもがんのリスクが調べられる、そんな検査が次々と実用化されています。尿で、唾液で、涙で…。自宅でできる最新の”がんの検査”とは。

■“線虫”が「尿」を嗅ぎ分け 検体は自宅で採尿

東京都のオフィス街にある施設。土曜日にもかかわらず、次々と訪れる人がいました。目的は、今がんかどうかのリスクを調べる検査です。

去年11月にオープンした『N-NOSEステーションTOKYO』。がんのリスク検査で使われるのは、体長1ミリの細長い生物「線虫」です。嗅覚に優れている線虫が反応するのは、がん患者の尿の“におい”です。

実際に線虫を使った実験映像を見ると、健康な人の尿よりも、がん患者の尿により多くの線虫が集まっていく様子が確認できました。

この検査では、胃がんや大腸がん、肺がんなど、15種類のがんのリスクが調べられるといいます。ただし、どの部位のがんかまでは特定できません。尿を使った検査でリスクを知り、がん検診に行くきっかけにしてほしいということです。

線虫を使って「尿」を調べるがんのリスク検査は、これまで医療機関で採尿する必要がありました。しかし、新型コロナウイルスの影響で「病院控え」があると、担当者は話します。

(HIROTSUバイオサイエンス 経営企画室 永溝はるか さん)
「実際にお客様からお聞きしたお話ですと、『病院に行くのが怖い』と思っている方だったり、長時間どこかで待って検査を受けることに不安を覚えているそうで」

そこで、自宅で尿を採取し、全国に3か所ある施設に持ち込むことで、がんのリスク検査を受けられるようにしたということです。
(N-NOSE 1万1550円(税込み) ※自宅で採尿し持ち込む場合)

■「唾液」は郵送して受検することも可能。

山形県鶴岡市にある『サリバテック』。

この企業でも自宅でがんのリスク検査が受けられるサービスを提供しています。

(サリバテック 検査・研究責任者 森雅代 さん)
「送られてきた“唾液”を受け取って、凍らせております」

この検査で使うのは「唾液」。検査キットを取り寄せ、付属のストローを使い唾液を採取、それを郵送することで検査が受けられます。
(サリバチェッカー 2万9700円(税込み))

調べられるがんは、膵臓がん、肺がんなど、5種類。この検査も、結果はがんかどうかの「リスク」で示されます。検査に注目した佐賀県みやき町は、住民のがんの早期発見につながるのではないかと、福岡大学などと共同で検証を行っています。

■「涙」を使ったがん検査も研究進む

今後の実用化を目指して研究が進められている検査もあります。神戸大学ががんを検査するために調べているのは、「涙」です。目にろ紙を入れて採取します。少し痛そうですが…。

(番組スタッフ)
「痛くないです」

神戸大学の研究チームは、がん細胞から分泌される特定の物質を、「涙」を使って測定しています。検査で調べるのは、「乳がん」。

(神戸大学大学院 工学研究科 竹内俊文 教授)
「これまで涙の中にもガンマーカーがあるということはわかっていたんですが、含まれている濃度が低くて測定できなかったんです。今回我々が開発した測定法は従来の測定法の1000倍くらい高い感度がありますので」

2022年度までの実用化を目指していて、将来的には自宅で涙を採取して検査できるようにしたいということです。

■取材後記

線虫を使った「尿」の検査も、「唾液」の検査も、一般向けに実用化されたのは去年。「涙」を使った検査の研究が発表されたのも去年。身体的負担が少なく、魅力的に感じる人がいる一方で、これらの検査でわかるのはあくまで“リスク”。がんを100%見つけられるものではないという点は注意が必要です。

コロナで医療ひっ迫の状況が続くなか、今後も病院に行かずにできる“がんの検査”は増えていく可能性があります。それでも私を含め特に20代・30代にとっては、がんをまだ遠い存在に感じている人も多いかもしれません。
ただ二人に一人はがんになる時代。がんは決して他人事ではありません。
(news every.ディレクター 目黒 晃)