食品ロス削減へ…鮮度“見える化”の実験
社会問題化する食品ロス。コロナの影響で人気のネットスーパーでは、鮮度の高い商品から配送するため、鮮度の落ちたものは売れ残りやすく、処分されます。そこで、アプリを使って鮮度を“見える化”し、ロス削減につなげようと、ある実験が行われています。
■利用増のネットスーパー 課題も
ある実験に参加している、都内在住の遠山茂さん宅を訪ねました。
スマホを見ながら冷蔵庫を開ける遠山さん。「使っていないバラ肉があるので、使いますね」と調理していました。
妻の麻央さんと一緒にテーブルを囲みました。材料の豚肉やキャベツなどは、ネットスーパーで買ったものです。
コロナの影響で利用者が増えているネットスーパーですが、課題があります。
■鮮度の低い食材 売れ残りがロスに
実験を行う日本総研の和田美野さん
「今はお客さまの満足のために、新しいもの(食材)から出していますが、(鮮度の)低いものが残ってしまいます」
ネットの場合、店側は苦情が来ないように、鮮度の高い商品から配送します。そのため鮮度が落ちたものは売り物にならなくなります。
神奈川県相模原市の日本フードエコロジーセンターの工場では、大量の野菜や果物が運び込まれていました。スーパーなどで売れ残った食品を、家畜の飼料に加工しています。まだ食べられるものでも、売れ残りの多くが「食品ロス」として処分されてしまいます。農林水産省によると、その量は、日本では年間で約600万トンにもなります。
■専用アプリ “鮮度”一目で
そこで行われているのが、専用アプリで食材に付けられたQRコードを読み取り、鮮度を数値として表示する実験です。和田さんに画面を見せてもらうと、バナナの“採れたて度”がどれほどかが、一目で分かりました。
数値が高ければ新鮮ですが値段も高め。低ければ値段も安くなります。このアプリで、消費者が「鮮度と価格」を選べるようにして、売れ残り削減につながるのか検証しています。
■安さと鮮度…どちらを取る?
鮮度を見える化することで、買い物の仕方はどう変わるのか。
実験に参加する遠山さんも、このアプリで買い物をしています。その様子を取材すると、ミニトマトは208円のものではなく、新鮮な283円の商品を選んでいました。麻央さんは「ミニトマトはさすがに、みずみずしい方がいいな(と思いました)」と話しました。
一方で、「今日とか明日中に絶対使い切れるんだったら、鮮度が多少落ちていても安い方がいいよね(と思います)」とも。すぐ食べるつもりの食材は、鮮度よりも安さを重視していました。
私たち消費者の意識と売る側の工夫で、食品ロス削減につなげられるか、政府もこの実証実験を検証する予定です。
(2月18日『news zero』より)